レ枢機卿のマザリナード文書に関し、RIM(Recherches internationales sur les Mazarinades )のカタログ記載内容に関する指摘を受けての公式見解(記述の根拠とコメントの追加に関して)
*以下はフランス語による公式見解を日本の読者にむけて、わかりやすく図像を加えたものです。
フランス語原文は以下のURLからお読みになれます
http://mazarinades.org/2024/01/precision-et-rectification-sur-avis-aux-malheureux-piece-attribuee-a-retz/
【方法に関する確認】
マザリナード・プロジェクト(2010−2011)の立ち上げ以来、明示してきたことではあるが、著者名の後に [ ]内に疑問符「?」がある場合(すなわち[?] がつけられている場合)、その文書はその著者に帰されているが、文書のタイトルページにもその名が記されておらず、テクスト内にもいかなる署名も含まれていないこと示すものである。したがって、それは研究グループRIMが、当該文書をそこに言及されている著者に帰属させるものではないことを示しているのである。
例えば、次のような例である。
ADVIS AVX MAL-HEVREVX、ジャン=フランソワ・ポール・ド・ゴンディ/レ枢機卿 [?] 、 [M0_488], etc.
【注意参照のこと】以下のように、かの有名なスカロン作『ラ・マザリナード』も、RIMのカタログでは、作者名に [?] をつけている。
【RIMはより厳密にカタログ内のコメントを以下のように加筆訂正する】
このような誤解を生じたために、RIMでは、ここに、Avis aux malheurex と題される1652年の文書がレ枢機卿に帰されるものではなく、「枢機卿の作品として出版されたものでもない」ことを明示したい。
この修正の根拠として、私たちは「注釈欄」に、ユベール・キャリエによる以下の註記(La presse de la Fronde (1648-1653) : Les Mazarinades. La conquête de l’opinion, Genève, Droz, 1989, p. 315.)を引用し、書き加えることにした。キャリエは、クレぺによるこの文書の著者をレ枢機卿とすることの提案(1869年)およびシャントローズによるその踏襲にも言及しつつ、しかし、この著者の帰属は、「きちんと判別されたわけではなく」、レの文体も見出されず、政治的な視点からも「レなら決して書かなかったであろう文章」を含んでいるとする。
【以下、今回のコメント加筆に至った元の論文の記述】
« カタログ編纂者セレスタン・モローは、『レ枢機卿に対するある不幸な人からの返答』という他の作品がこの作品をレ枢機卿の作としており、「これはおそらく理由がないわけではないだろう」ということでレ枢機卿の作品に数えている。何か作品それ自体の中に具体的な根拠があったわけではないにも関わらず,この評価をもとに,全集やマザリナードの国際研究グループRIM(Recherches internationales sur les Mazarinades)は,この Coed6 をレ枢機卿の作品として掲載している。 » (涌井萌子, 匿名政治パンフレットの計量的分析 ―「レ枢機卿のマザリナード」の帰属検証―OUKA [Osaka University Knowledge Archive], 2022, p. 56. https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/91701/gbkp_2022_t_041.pdf )
(引用文内下線は執筆者による) (仏訳は省略)