1649年1月8日〜1月14日

1月5日から6日にかけての深夜、宮廷のサン=ジェルマン=アン=レー城への移動については、19世紀の小説家アレクサンドル・デュマ(父)が『二十年後』に描写しています。

本の行商人ジャック:『二十年後』はデュマ(父)作『三銃士』の続きですね。

ノーデ:『三銃士』がリシュリュー枢機卿とルイ13世の時代だとすると、『二十年後』はマザラン枢機卿と摂政王妃アンヌ様の時代。そしてまさにフロンドの乱が始まる1648年から物語が始まる。

ジャック:『三銃士』は各々それぞれの道を歩んでいます。ダルタニャンはマザラン枢機卿の側について王室に仕える銃士隊副隊長に昇進。この夜のパリ脱出にも一役買うことに。

ノーデ:サン=ジェルマン=アン=レー城についたとき、寒さに震えあがる人たちに床に敷く藁を売って一儲けするのだ。

デュマ(父)の描くダルタニャンは実在の人物

ジャック:なんて目端のきく御仁だ!

ノーデ:デュマ(父)はダルタニャンを頭の回転の早い人物として描いている

ジャック:この人物は実在したのでしょうか?

ノーデ:実在している。けれども、デュマ(父)の描くような銃士隊副隊長ではなかったようだよ。マザラン枢機卿の側にいて、着実に出世していったというのは事実のようだ。

デュマ(父)の描くフロンドの乱に垣間見える革命の記憶

ジャック:デュマ(父)は1648年、フロンドの乱の始まりにおいて、ボーフォール公がヴァンセンヌ城から脱出する経緯も面白おかしく描写しています。

ノーデ:かなりの紙面をさいている。

ジャック:デュマ(父)は19世紀の初めに生まれ、フランス大革命を生きた人たちに囲まれて育っていますからね、ところどころに「これは…」と思えるような描写があります。

ノーデ:フランス大革命の影響は、『二十年後』のエピソード、英国王チャールズ1世の処刑にいたる場面にも感じられる。

ジャック:チャールズ1世の処刑はフロンドの乱とまさにおなじ時期にあったイギリス清教徒革命によるのでしたね。

ノーデ:処刑はちょうどこの1月の出来事だ。

ジャック:処刑台の下のアトスの額に落ちるチャールズ1世の血。

ノーデ:フィクションの描写が与えるインパクト。

ジャック:史実とフィクションの交差。デュマ(父)の作品を読み解く面白さですね。

アレクサンドル・デュマ(父)の肖像
Nadar – Alexander Dumas père (1802-1870) – Google Art Project 2