1649年11月17日〜11月23日

早々に事態を収拾したいルイ14世の叔父ガストン・ドルレアン

本の行商人ジャック:何にでも首をつっこみたがるボーフォール公とは真逆で、ルイ14世の叔父であるオルレアン公は貴族たちの反感を買うのを嫌い、早々にこの特権問題からは手を引くことにしたみたいですよ

ノーデ:ということはムッシューの取り巻きも同様ということだな。

ジャック:不思議なことに、貴族会議という外圧によって、王族の方々が一時的にまとまっているように見えるのです。ロングヴィル夫人までもが。

ノーデ:それはおそらく、表向きだけで、いろんな思惑を隠していることだろう。ところで、当のおふたりさん、ラ・ロシュフーコーさんとド・ポンス夫人はどうしているのだろう?

ジャック:ラ・ロシュフーコーさんはこんな騒ぎになってしまって、周囲に迷惑はかけたくないと話されているようですよ。だから、今回は見送るつもりだと。それはド・ポンス夫人にも伝えられ、一緒にオルレアン公に会いに行ったそうです。そのあとで、公とロングヴィル夫人の助言もあり、ラ・ロシュフーコーさんはひとりでコンデ親王に会いに行くのですが…

この私が、君の栄光を守ってみせる(キリッ)! 強気のコンデ親王

ノーデ:コンデ親王はその考えに真っ向反対するのだな?

ジャック:そうなのです!自分から願いを取り下げるなどもってのほかと。

ノーデ:あの人の性格ならそうだろうなぁ。

ジャック:どうもコンデさんはマルシャック公子の栄光をご自分のことのように考えておられて…。この特権の授与に反対するやつは片端からぶっ潰してやるくらいの勢いです。

ノーデ:すると話はまたオルレアン公に差し戻されるか…

ジャック:ですが、ここで事態が急変するんです。

ノーデ:いったいどうした?

ジャック:じつは貴族会議を束ねるロピタル元帥が王妃様に議事録のようなものを提出したのですけれど、その内容が衝撃的すぎるものだったからです。

本気出す貴族会議 青ざめるオルレアン公

ノーデ:特権授与撤回で円満解決のはずじゃなかったのか?

ジャック:正反対ですよ!放っておけばたいへんなことになると考えられるような内容。

ノーデ:正しいことをしようとすると、往々にして暴走しやすいからな。

ジャック:すでにこの2年間に何度も国家を脅かすような計画が企てられていますからね。とりわけマザラン枢機卿はその具体的な標的になっています。

ノーデ:常に王国を滅ぼす元凶と名指されている。

ジャック:貴族会議では奸臣が権勢をふるうことへの嫌悪があるのです。そこで王国基本法に抵触するような現在の王政のあり方を糾弾しようという方向に、議論は流れつつある。つまり…

ノーデ:つまり?

ジャック:抜本的改革が必要だと。

ノーデ:それって一昔前の宗教戦争のときに、プロテスタント側から出てきたモナルコマキ(暴君放伐論)みたいな状況ではないか!

ジャック:だから、オルレアン公は震えあがったそうですよ。

ノーデ:いやいやいや、そりゃコンデさんもマザラン枢機卿も震えあがるわ。いやだわ、それは。

ジャック:でしょう?

ノーデ:だって、貴族って、武装集団化すると制御不能になってしまうもの。

ジャック:だから、オルレアン公は王妃様の元を辞すなり、この件は王様の成年式まで棚上げだと大声で叫ばれたわけですよ。

ノーデ:えーらいこっちゃぞ!

ジャック:揺れる王国。続きはまた来週!

ルイ14世の叔父 ガストン・ドルレアン


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