1649年11月24日〜11月30日

王族の中にも貴族を煽る人がいる ヴァンドーム公

本の行商人ジャック:オルレアン公が今回の特権の授与は棚上げにするとおっしゃったのに、貴族たちの集会はまだ続いています。

ノーデ:なにしろボーフォール公の親父様、ヴァンドームさんが貴族会議で演説し、ド・ポンス夫人とマルシャック公子に与えられようとしている特権、ならびにスダンの虎、ブイヨン公爵が求めている自領の主権には断固反対すべしなど煽っているからな。

ジャック:王族のヴァンドームさんのこの演説に、皆さん、えらく感動したようです。

ノーデ:そのおかげで団結が強まり、前王亡き後の摂政政治になってから生じている数々の不公平を全部ただすべきだ!との意見で一致したのだ。

ジャック:ということは、今、問題になっている特権の授与だけでなく、さかのぼって摂政政治になってから与えられた特権も再考ということになりますか?

ノーデ:理屈からいうと、そうなるな。

ジャック:宮廷がざわざわするわけですよ。

ノーデ:そればかりでないぞ、貴族たちは聖職者にも同調を呼びかけている。そこには当然、高位聖職者として、民衆煽動の元祖ポール・ド・ゴンディ協働司教が加わっているのだ。

ジャック:パリ高等法院も同調するのでしょうか?

ノーデ:そうなったら、一大改革運動に発展してしまうかもしれん。

ジャック:そりゃ、摂政側も放っておくわけにはいかないですね。

この騒ぎで再び浮上するモンバゾン夫人とコンデ家の因縁

ノーデ:そこでだ、王妃様はさすがにもう放ってはおけないと、四人の元帥を貴族会議にお遣わしになり、今回の特権の授与は撤回すると正式に伝えさせた。

ジャック:速いですね。

ノーデ:こういうことは速さが勝負。想定外の素早い対応に、貴族の過激派は出鼻をくじかれる格好になった。

ジャック:この状況でも、コンデ親王はあいかわらず強気で、特権維持の姿勢を見せておられますが。

ノーデ:コンデ親王は納得していない。それなら外国の君侯らが大使としてやってきた時に国王の御前で受けた特権も取り上げるべきだなどと、国務会議でご提案になったそうだ。

ジャック:それは実行できないのではないでしょうか…だって、そんなことになれば、ロレーヌ家が黙っていないでしょう?

ノーデ:ロレーヌ家はヨーロッパで最も古い由緒ある家柄のひとつ。フランスの貴族と思われているが、じつは外国の貴族なのだ。

ジャック:しかしまあ、途中、いくつか揉めたにせよ、この騒ぎもこのあとは一応収束にむかっていくでしょう。

ノーデ: だが、唯一解決せずに残るのは、モンバゾン夫人の娘に与えられていたお腰掛け特権だな。

ジャック:よりによって、モンバゾン夫人ですか…こりゃまいったな。ロングヴィル夫人、というかコンデ家の宿敵ですからね。

ノーデ:コンデ家としては、黙っていない。

ジャック:モンバゾン夫人vsコンデ家の因縁の対決になりますか…

ノーデ:来週はスピンオフで、この方々のエピソードをお送りします。乞うご期待!

Louis,_Grand_Condé(コンデ美術館所蔵)