1649年12月15日〜12月21日

反デムリからの反マザラン再燃

ジャック:そうは言ってもですね、ノーデ先生、デムリ復帰の噂が流れただけで、さっそく巷ではマザリナードが溢れ出て、あちこちに貼りだされていますよ!

ノーデ: たしかに、たしかに、反デムリからの反マザランも再燃しておるようだな。

ジャック:そんな悠長なことを言っている場合ですか? これでは枢機卿の思い通りどおりになんか、なりっこありませんや。

ノーデ:ここはいったん後退だな。戦術としての後退。

ジャック:それにしても、こられのマザリナードの背後には、いったい誰がいるのでしょう?

ノーデ:枢機卿のお考えでは、オルレアン公が推している人物の兄で、高等法院の評定官をしている人物らしい。だが、じつはデムリ復帰をのぞむ声も一方にはあるのだよ、ジャック。

ジャック:まじですか…誰が待ち望んでいると?

デムリ支持者とは…

ノーデ:デムリさんと一緒に追い出された徴税請負人たちだよ。

ジャック:悪名高き徴税請負人の皆さん!

ノーデ:彼らは大金持ちだ。その潤沢な資金をちらつかせつつ、デムリ以外に王国を困窮から救えるものはいないという。

ジャック:デムリさんが財務監督官長だった時代に、王様にたくさん前貸ししていますもんね、あの人たち。中抜きもやり放題だったし。

ノーデ:それだけ甘い汁も吸わせてもらったわけだが、それゆえにデムリ復帰を望んでいる。そして、また新たな貸付けの準備があると公言しているのだ。

ジャック:そりゃ、王様には都合のよい話で。

ノーデ:しかもだ、宮廷にも高等法院にも、この貸付けに一枚噛んで、儲けさせてもらった個人がいるのだよ。

ジャック:そういう人たちにはデムリ復帰が望ましいでしょうね。

ノーデ:デムリが再任されれば、またぞろ暴徒が暴れ出すと危惧する人もいるが、結局は枢機卿の思い通りにデムリ復帰が決まる。

ジャック:オルレアン公も懐柔されてしまったのですね?

ノーデ:マザラン枢機卿の粘り勝ちだ。

熱烈歓迎されるデムリ

ジャック:だけど、道を歩いたら、デムリさん、石を投げられるのとちがいますか?

ノーデ:再任にあたって、デムリはパリ市の定期金債権者にちゃんとお支払いすると約束した。しかも毎週。

ジャック:パリ市にはこの定期金に投資している人がたくさんいますからね。国債みたいなものだといえば、わかりやすいですかね?

ノーデ:利子が年金のように定期的に支払われる市債というところだな。

ジャック:パスカルさんの父親もパリへ出てくるにあたって財産を処分し、この市債を買い、年金生活者になったのでしたね。

ノーデ:だが、政府が財政難になると、利子が払われなくなったり、減額されることもある。

ジャック:そうそうフロンドの乱の前でしたが、パスカルさんのお父上は減額に抗議してお尋ね者になり、身を隠すことになったそうです。

ノーデ、1638年だったかな…おっと、これはつい横道にそれたぞ。

ジャック:フロンドの乱の間にも、その支払いが滞ることがありましたからね。利子、つまり年金がちゃんと支払われる、となれば、皆さん、しずかに口を閉じますよ。

ノーデ:しかも、デムリさんは高等法院にお友達をつくることも忘れていなかった。

ジャック:お友達大事。

ノーデ:一年前に皆から嫌悪の矛先をむけられて追われた人物が、歓呼の声で迎え入れられるというわけだよ。

ジャック:ほんに、人々の気持ちは変わりやすいというか、些細な利益でコロッと態度変えますね。

ノーデ:しかし、水晶玉によれば、こうして返り咲いたものの、来年には寿命がつきてしまうらしい。

ジャック:まことに人生は…

ノーデ:あざなえる禍福よ。

パルティセリ・デムリ

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