1月30日英国王チャールズ1世処刑のニュースはまたたくまにフランスに伝わった
英国議会の決断におののく人々
ノーデ:ロングヴィル公爵夫人がパリ市庁舎で産気づいているのとほぼおなじ時期に、お隣の英国では国王のための処刑台が準備されていたというわけだ。
本の行商人ジャック:処刑は1月30日ですが、このニュースはすぐフランスに伝わりましたよ。
ノーデ:英国の議会とフランスのパリ高等法院ではその成り立ちが異なるわけだが、王権に制限をかけようとしていることにおいては共通の関心があるからね。
ジャック:財政難にもかかわらず、チャールズ1世も内戦のために無理な課税をした。そのため議会と全面対決することになりました。
ノーデ:フロンドの乱におけるパリ高等法院の抵抗も30年戦争のための課税をきっかけにしていたわけだから、おなじような問題に直面していたわけだ。
英国議会とパリ高等法院のちがい
ジャック:しかし、英国議会は地方の支配層から選ばれてきた人たちですね。
ノーデ:かなり大雑把な言い方だけれどね。
ジャック:パリ高等法院の法官たちはそうした出自の人たちじゃない。
ノーデ:むしろ官職を王様から買って、現在の地位にあるわけだから、体制がひっくり返るところまでいくとちょっと困る…
ジャック:だから国王を処刑して王政を倒すところまではいかない。 ノーデ:パリ高等法院はむしろ宮廷と共存しつつ、王権を制御したいのだ。
王権神授説
ジャック:チャールズ1世は王権神授説により、絶対的権力を有すると主張していたようですが、処刑されてしまいます。
ノーデ:フランスの場合、ルイ14世がまだ未成年であったというのは大きいかもしれない。
ジャック:矛先は外国人の宰相、マザラン枢機卿に向かいますからね。
ノーデ:隣国とはいえ、その王朝のたどる運命は諸々の条件によってこうもちがってくるのだな。
ジャック:とはいえ、王権の制御という意味で、英国の出来事はパリ高等法院の面々にも影響が大きかったですね。