1649年4月1日〜4月7日

和平合意が成立したら、マザリナード文書のお掃除が始まる

本の行商人ジャック:いよいよサン=ジェルマン=アン=レーにて和平が宣言されました!

ノーデ:7項目ぐらいの合意事項が明示されたが…

ジャック:とりあえずの目標はパリの武装解除ですかね。

ノーデ:マザリナード文書も取り締まりが厳しくなるぞ。高等法院は過激文書を印刷した業者や、許可なく行商するものなどは逮捕すると決めたようだ。ジャックも用心したほうがいい。

ジャック:この摘発にはシャトレの旦那方が総動員されるみたいです。あの人たちは情け容赦がないから。

ノーデ:しかし、買う客がいて儲かっているものを取り締まるというのは、むずかしいな。

死刑宣告も!?

ジャック:摘発の対象になるのは、マザラン枢機卿や王妃様への誹謗中傷ばかりとはかぎらないのです。

ノーデ:国王顧問官でもある有名な弁護士さんはオルレアン公や高等法院を侮辱する文書を書いたとして逮捕されるだろうな。少し先のことだが。

ジャック:司法官で誹謗文書を書いていたポルタイユさんは身を隠さざるをえないでしょう。

ノーデ:零細印刷業者のクロード・モルロが逮捕され、死刑宣告を受けるのは7月。

ジャック:かの有名なマザリナード文書、『王妃の閨の帳、すべてを語る』通称「キュストード」を印刷したモルロさんですから、早晩逮捕は逃れられなかったと思いますよ。

ノーデ:あれはじつにえぐい文書だった。王妃様を中傷する政治的ポルノグラフィだからな。

ジャック:それがベストセラーです! 印刷部数も少ないがゆえにコレクター垂涎の文書なのですよ。

ノーデ:モルロはそれ以前にも高等法院批判の過激文書を印刷していたしな…

ジャック:前々から目をつけられていたのはたしかですね。

(モルロは処刑直前に民衆が暴徒化し、からくも処刑台から逃げ出すことができます。同時代人がことの顛末を記録しています。詳しくは『フロンドの乱とマザリナード』第3章「17世紀の出版業とマザリナード文書」p.94-96をご覧ください)

通称「キュストード」、 『王妃の閨の帳、すべてを語る』東京大学コレクションB_4_15