巷に雨の降るごとく、パリにはマザリナードが
和平とともに言論統制が始まる!
ノーデ:誹謗文書の取り締まりといっても、1月初めに、国王がパリを離れた直後、外国人の宰相が王様をかどわかしたかのごとく騒ぎ立て、マザラン枢機卿を「国民の安寧を見出すもの」として弾劾したパリ高等法院の裁決などは最も過激なマザリナード文書だったといえる。
本の行商人ジャック:その当時の取り締まりはむしろマザラン擁護の文書が摘発されていましたよね?
ノーデ:今度は逆。そしてサン=ジェルマンの和平を邪魔しようとする文書が摘発されることになった。
ジャック:パリ高等法院もこの政治的混乱を早く治めたいから、シャトレのお役人の尻を叩いているようですが…
ノーデ:いかんせん人手が足りんのじゃ。
最初の家宅捜査
ジャック:まず印刷業者、次に本屋、そして行商人の順で摘発されてます。
ノーデ:今週は印刷業者のコティネが家宅捜索を受けた。
ジャック:これが最初の家宅捜索ですが、コティネさんはその直前に逃げ出されたようです。
ノーデ:しかし、地下に秘密のアトリエがあり、そこにいた若い印刷工は逮捕された。
ジャック:コティネさんが印刷した『イタリア人の和平に対するフランス人のため息』はまさにこの和平への違和感を強く主張していましたからね。
ノーデ:これは直球のマザラン批判文書。
ジャック:売れに売れて、版を重ね、海賊版まで出ていますよ。
ノーデ:しかし、この摘発は出版に関わるすべての人を恐怖に陥れた。
ジャック:実際、パリ高等法院の裁決では、死刑を覚悟せよとのお達しですよ。宮廷との和平に水をさすような物言いはすべて取り締まりの対象になります。
『イタリア人の和平に対するフランス人のため息』はフランス国立図書館(BnF)の電子図書館Gallicaで読むことができます。
https://gallica.bnf.fr/ark:/12148/btv1b86069349?rk=21459;2
『マザリナード探求』の表紙は17世紀の本の行商人です。東京大学駒場博物館の「マザリナード展」では展覧会の案内人として「ジャック」という愛称で呼ばれていました。「日めくり」では、ずっとガブリエル・ノーデの対話相手を務めています。これからもどうぞよろしく!