1649年6月24日〜6月30日

縁談まとまらず

本の行商人ジャック:メルクール公爵とマザラン枢機卿の姪ロール・マンシーニ嬢の結婚話が出てきたのは今年の4月ですね。

ノーデ:しかし、まとまらんね。

ジャック:コンデ親王の他にも反対している人がいるんですか?

ノーデ:メルクール公の御母堂様、セザール・ド・ブルボン=ヴァンドーム御大の妻、フランソワーズ・ド・ロレーヌ様が首を縦に振らないのだ。

ジャック:お父さんのヴァンドーム公は乗り気でなのに?

ノーデ:そもそもメルクール公爵位はこの人を経由してもたらされたものなのだよ。フランスで指折りの裕福な相続人のひとりだったからな。

マザラン枢機卿の姪たちだけじゃない⁉︎

ジャック:枢機卿は姪御さんたちをイタリアから呼び寄せたのも、政略結婚の駒にするつもりだと、宮中ではもっぱらの噂です。

ノーデ:枢機卿は姪御さんだけでなく、甥御さんも呼び寄せているぞ。

ジャック:あー!そういえば、その甥御さんも、えーっと、相手は誰でしたっけ、そうだ、ギーズ家のお姫様と結婚するって噂です!

ノーデ:たしかに噂になっておるな。しかし、甥御くんはまだ、16か17だろう?

ジャック:ギーズ家のお姫様は34歳です!

ノーデ:あの方は身分も高く、財産もあるのに、なぜか縁遠いのだ。

枢機卿の甥とギーズ家のお嬢の縁談は…

ジャック:このご縁談、まとまるんでしょうか?

ノーデ:いや、これは無理。

ジャック:年齢差が問題なのでしょうか?愛があれば年の差なんて…

ノーデ:それよりもキーズ嬢のお母さんが、前の結婚で産んだお子さん、つまり父親違いの姉がネック。

ジャック:お母さんがギーズ公と結婚する前に結婚していたのは…えっと、モンパンシエ公アンリさん? あ!!!!!

ノーデ:そう、今は亡きモンパンシエ公の相続人といえば?

ジャック:オルレアン公の最初の奥さん。

ノーデ:オルレアン公夫人、今は亡きマリー・ド・ブルボン=モンパンシエは、父の尻を叩いてフロンド派で活躍するグランド・マドモアゼルのお母さんです。

ジャック:となると、マザラン枢機卿の甥御どのが、年齢差を乗り越えてギーズ家のお姫様と結婚したら?

ノーデ:オルレアン公は前妻を介して、甥御どのの義理の兄になります。

噂の効果

ジャック:グランド・マドモワゼルにとっては義理の叔父さん。

ノーデ:あのグランド・マドモワゼルのご気性だ。黙っちゃいないでしょうよ。

ジャック:これはありえんですな…

ノーデ:しかし、宮廷ではさもありえるかのように噂が飛び交うんだ。

ジャック:それがまたコンデ親王の耳にも入る。

ノーデ:たとえフェイクニュースであっても、人々の行動には影響を与えうる。

ジャック:これらの縁談話はとりわけマザラン枢機卿への嫌悪感情を煽ることになるでしょうね。

ノーデ:誰が噂をし始めたのかわからないが、目的はそこらへんかもしれないぞ。

ロール・マンシーニ(油彩 パブリック・ドメインより)