マザリネット その1:マザラン枢機卿の姪であること
ローラ・マンシーニ嬢の肖像
ノーデ:ロール・マンシーニ嬢はフロンドの乱の直前、1647年の夏の終わりにローマからパリへ呼び寄せられた。
本の行商人ジャック:まだ11歳くらいでしたでしょうか?
ノーデ:当時の印象を王妃様の女官はこう記している。「感じのよい茶色の髪の少女で、見目麗しく、12か13歳くらいに見えた」
ジャック:実際の年齢よりも大人びて見えたのでしょうか。
ノーデ:1636年生まれだから、メルクール公との縁談が持ち上がったときには、13歳だ。
結婚は先延ばしにされる
ジャック:明日にもご成婚となりそうだと、皆が話しておりますが…
ノーデ:実際には1651年まで結婚には至らないはず。
ジャック:あ、出た、ノーデ先生の水晶玉!
ノーデ:しかも、結婚するのは、マザラン枢機卿の亡命先であるドイツ。
ジャック:ひぃ! それじゃ、枢機卿はいずれ亡命なさるのですね?
ノーデ:そのように水晶玉には映っておる。
ジャック:フロンド暦二年目、まだまだこれから波乱の展開が…
ノーデ:天地がひっくり返るような騒ぎよ。
ジャック:それでも人々は生きていく。
ノーデ:歴史の波に翻弄されながらな。
マザランの姪たち
ジャック:ロール・マンシーニ嬢がフランスにやって来たとき、ほかにもふたりの姪と甥が一緒だったとのことですが…
ノーデ:妹のオランプ嬢はまだ9で、茶色い髪、面長で、目は小さいがキラキラしており、いずれ愛嬌のある表情になるだろうと期待されたらしい。
ジャック:このおふたりは枢機卿の下の妹さん、ジローラマさんと、マンチーニ男爵のお子さんですね。
ノーデ:もうひとり、上の妹さん、マルゲリータさんとマルティノッツィ伯爵のお嬢さんアンナ=マリア嬢も一緒に来たのだ。
ジャック:アンナ=マリアさんは10歳でしたか。
ノーデ:それにジローラマさんの息子さん、つまりマザラン枢機卿の甥御くんのポールも。みんなルイ14世と同じくらいの年頃の子供たちなのだ。
ジャック:ちょうどいい遊び相手になる年頃ですね。
マザリネット誕生
ノーデ:じっさい、これらの子どもたちは王妃アンヌ・ドートリシュ様にも手厚く迎えられ、宮殿で生活するようになる。
ジャック:さらにあとからも姪御さんがイタリアから到着します。
ノーデ:彼女ら7人のお嬢さん方は、すぐさまマザリネットと呼ばれるようになる。
ジャック:宮廷内でも特別な存在感をもつようになるのですね。
ノーデ:もちろん、反マザランの誹謗文書の書き手たちが、彼女たちを放っておくわけがない。
ジャック:ですよね…