1649年7月15日〜7月21日

マリ・マンシーニ嬢

ノーデ:最初の3人は内乱の前にフランスに来たが、あとの4人は、1654年から1655年にかけて、内乱が治まってからマザラン枢機卿に呼び寄せられる。

本の行商人ジャック:後から来た枢機卿の姪御さんたちのなかに、ルイ14世の心を射止めるひとがいるんですねか?

ノーデ:1639年生まれのマリ・マンシーニ嬢。

ジャック:ルイ14世とは一つ違いだ。

ノーデ:フロンドの乱の収まった翌年、1654年にパリに着いているので、到着した時は15歳。

ジャック:ルイ14世は16歳。それって、ロミオとジュリエットとほぼおなじ年齢じゃありませんか!

ルイ14世の初恋

ノーデ:思春期の多感なお年頃だった。

ジャック:このころパリに呼び寄せられたのは、マリ嬢のお母さんと幼い妹オルタンス、伯母とその娘のもうひとりのロール。

ノーデ:ルイ14世と急激に接近するのは、1658年。カレー滞在中に王様が重い病に倒れ、皆がもうだめだと思ったときだ。

ジャック:宮廷中が、次は王弟殿下の御即位だと考え、王を見捨てて、そちらへ殺到しましたね。

ノーデ:だが、マリだけはちがったのだ。

ジャック:王様は、真剣にマリとの結婚を考え、マザラン枢機卿に許しを乞うたそうですが…

引き裂かれる恋人たち

ノーデ:許されるわけがないでしょう。

ジャック:えええ、なんで!!! 枢機卿は王様の外戚となって、さらに権勢を奮うのではないのですか?ほら、あの、日本の藤原なんとかみたいに!

ノーデ:王の結婚は個人の問題ではない。とりわけフランスを取り巻く国際関係において、ハプスブルグ家の脅威が去ったわけではないのだ。

ジャック:王母アンヌ様はどうリアクションを?

ノーデ:怒髪天を衝くがごとく、お怒りだそうだ

ジャック:こ、こわい…

ノーデ:側近によると、こうおっしゃったそうだよ。「国王は全フランスを敵にまわし、臣民は反乱を起こすだろう。そして私はその蜂起の先頭にたち、弟を擁立する」などと、廃位にまで言及したらしい。

ジャック:それで枢機卿は急いでマリさんとイタリアのコロンナ家の若様との縁組を決め、王様にはスペイン王女のマリー・テレーズ・ドートリッシュ様を妃に迎える段取りをする。

ノーデ:スペインの王様は王妃アンヌ様の弟、そのお妃様は先王ルイ13世の妹という近い間柄だ。

ジャック:悲劇ですね…

ノーデ:のちのラシーヌの『ベレニス』はまさにその心情を表現しているといわれる。

ジャック:来週はラシーヌ先生にも少し触れましょう。

マリ・マンシーニ(右)とオルタンス・マンシーニ(左)の肖像(Royal Collection of the United Kingdom所蔵)