1649年9月03日〜9月09日

ルイ14世11歳のお誕生日をむかえる

ノーデ:国王陛下はこの9月5日にお誕生日を迎えられ、11歳におなりになる。

本の行商人ジャック:パリ市は歓迎の意を込めて、市庁舎で盛大な舞踏会を催します。

ノーデ:宮廷の面々も、王妃アンヌ様の号令で、みな着飾って参加するそうだよ。

ジャック:しかし、王族であるロングヴィル公爵夫人などは複雑な立場ですよね。

ノーデ:着飾ってやってくる人のなかには、フロンド派だった人もいるだろうということは王妃様も織り込み済み。むしろそういう人たちにバツの悪い思いをさせてやりたいとお考えのようだ。側近にそっと心中を明かしているが…。(Mottev. P.389)

ジャック:アンヌ様、けっこう根に持つタイプですからね!

パリ市の女主人はロングヴィル公爵夫人から王妃様に交代

ジャック:ロングヴィル公爵夫人などは、つい何ヶ月か前まではパリ市庁舎に立てこもっていた。

ノーデ:その市庁舎へアンヌ様がやってきて、王様の誕生日を祝うというのだから、さぞかし苦々しい気分だっただろう。

ジャック:ロングヴィル夫人はあの立てこもりの最中に、市庁舎でお産までしたのに。

ノーデ:生まれたのは男子で、パリ市に祝福されているという意味で「シャルル=パリ」と名付けられた。

ジャック:そしてバルコニーからフロンド派を鼓舞する演説をしていましたからね。

ノーデ:そのかたわらにいたブイヨン夫人も乳飲み子をかかえてフロンド派を勇気づけていた。

ジャック:フロンドゥーズたち、バルコニーを飾るの図。

ノーデ:しかし、今やパリを跪かせているのは王妃様だ。

ジャック:王妃様の方でも、この行事でそれを見せつけたいというお気持ちがおありのようですね。

ノーデ:お人が悪いというか、意外に負けん気なのだ。

舞踏会で踊る面々…

ジャック:ところで、この日の舞踏会では、王様は従姉妹オルレアン家のお嬢と踊ります。

ノーデ:グランド・マドモワゼルはルイ14世よりちょっと歳が上なのだが、自分は王様と結婚するものと思い込んでいる。そこは誰にも譲らんだろうよ。

ジャック:コンデ親王はシュヴルーズ夫人の娘さんの手を取り…噂のロングヴィル公爵夫人はロアン公爵と、そしてマザリネットのひとりであるマンシーニのお嬢さんは、求婚者であるヴァンドーム家のメルクール公爵と踊りますね。

ノーデ:よく考えると、すごい展開だな、この舞踏会!

ジャック:見たいような見たくないような…

ノーデ:夜にはこれまた盛大な花火が準備されておるよ。

ジャック:フランスの祝賀行事には、昔から花火は欠かせない。これがまた美しい!

ノーデ:まるでパリ市を支配する王妃様の勝利宣言のようだな。

ジャック:でも、ノーデ先生、こうした祝賀ムードの陰ではまだフロンドの炎がぷすぷすとくすぶっているのですよ…。

ルイ14世とアンヌ・ドートリシュ(ヴェルサイユ宮殿所蔵)