1650年10月13日―10月19日

心労と旅の疲れが祟ったのか、王妃アンヌ様のご容体が…

本の行商人ジャック:どうも、このところアンヌ様のご体調がよろしくないようです。

ノーデ:ご心労がたたったのであろうな。

ジャック:のーてんきのマドモワゼルはボルドーで大歓迎されたみたいに言ってましたけど、王妃様の周辺の人の印象はちょっとちがうようですしね。

ノーデ:「このたびのボルドーの反乱はほんとうに堪えた」と、王妃様は側近にもらしているそうじゃないか。

ジャック:本来なら王家を支えるべき大貴族やが、国王に反旗を翻した。さらに下々のものがそれに賛同して蜂起した…

ノーデ:そこへもってきて、王妃様は暑さにあてられお風邪を召されたようなのだ。

ジャック:弱目に祟り目。泣きっ面に蜂。王妃様にとっては、とんだご災難で…

ノーデ:これでは、ムッシューの反対がなくても、ラングドックなどを回るのはむずかしかったな。

ジャック: なんでも、お熱が続いているそうですが。

経由地ポワティエで一休み

ノーデ:結局、それでボルドーはもっと早くに出発する予定だったのに、十日もいることになった。さらにポワティエでは、いよいよ身動きがとれなくなってしまった。

ジャック:お気の毒に。旅先での病とは…

ノーデ:お元気のときだって、終日お馬車に揺られるというのはつらいものだが、ご体調がすぐれぬにもかかわらず、王妃様は旅をお続けになっているのだ。

ジャック:難儀なことですよね。

ノーデ:あるときは寝室係が遅れて、寝台が準備できず、木の椅子しかなかったのだが、そこにくず折れるようにして座りこんでしまわれたそうだ。だが、不平ひとつおっしゃらなかったとか…

ジャック:不行き届きを咎め立てもせずに?

ノーデ:むしろ、自分たちはつねに快適さに恵まれているので、たまにつらいことがあるのはよいと。

ジャック:今、ポワティエではパリまでまだ遠いですよ。

ノーデ:さしあたり、次の目的地、アンボワーズの城まではがんばっていただかねば。

ジャック:心配なことですね。

ノーデ:お熱さえ下がってくれれば…

Anne d’Autriche, par Rubens en 1625, musée du Louvre.

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