アンボワーズ城からフォンテーヌブローへ
あいかわらずご体調がすぐれぬ王妃様であったが…
ノーデ:やれやれ、王妃様のご体調がすぐれなかったので、アンボワーズ城での滞在が長引いておる。
本の行商人ジャック:とはいえ、もうそろそろご出発なさらないと。
ノーデ:医師らは1日に4回も瀉血しているそうだ。
ジャック:パリへ直行するのは無理でしょうなあ。
ノーデ:そこでフォンテーヌブローを経由していかれることになった。
ジャック:フォンテーヌブローといえば、ムッシュー、すなわちパリでお留守番中のオルレアン公はこの宮殿で生まれたのでしたね。
ノーデ:そのムッシューが来週にはフォンテーヌブローまで王妃様に会いに来るそうだ。
ジャック:マザラン枢機卿に会いに来るわけじゃないのですよね?
ノーデ:それは、あ・り・え・ま・せ・ん。
ジャック:とはいえ、なにも用がないのに来るわけではないでしょう?
コンデ親王らを脱走させる計画がある⁉︎
ノーデ:むしろ、王妃様がムッシューにあることを了承させたいのだ。
ジャック:それは、やはりコンデ親王、コンティ公、ロングヴィル公爵の処遇に関して、ですよね?
ノーデ:じつは、これらの囚人をマルクーシから、また移動させる必要がある。
ジャック:そりゃまた、どうして、急に?
ノーデ:彼らを脱走させる計画があるとわかったからだ。
ジャック:ひぇ〜!
ノーデ:もたもたしてる暇はないのだ。王妃様からの提案ならば、ムッシューも嫌とはいえまい。
ジャック:昔から、なぜか王妃様には逆らえないムッシュー。
ノーデ:ムッシューから特段の反対もなければ、11月15日から25日までの間に、ル・アーヴルへ移送することになる。護衛の任務はダルクール伯とのこと。
ジャック:途中で奪還されたりしないでしょうかね?
ノーデ:ダルクール伯の兵隊はそれほど間抜けではないよ。
ジャック:しかし、厳重警戒体制となるだろうな。

