1650年9月30日―10月6日

マドモワゼルとは

本の行商人ジャック:ムッシュー、すなわちルイ13世の弟、オルレアン公ガストンの最初の結婚で生まれたお姫様。

ノーデ:アンヌ=マリー=ルイーズ・ド・ブルボン=オルレアン…

ジャック:長い名前だなぁ。

ノーデ:あるいはマドモワゼル、もしくはグランド・マドモワゼルとも呼ばれる。

ジャック:父方の祖父がアンリ4世。ルイ14世とは従姉妹にあたるわけですが

ノーデ:ブルボン家、ヴァロワ家、メディチ家、ハプスブルグ家、ギーズ家、ゴンザーグ家、スフォルツァ家などの血をひくお姫様だ。

ジャック:それはもう歩く貴族年鑑みたいなお方。

ノーデ:(小声で)ゴータ年鑑は18世紀まで出ないよ。一応言っとくけど。

ジャック:母方からはモンパンシエ女公爵の地位を継いでおられます。

ノーデ:1627年生まれ。

ジャック:ルイ14世より9歳年上になりますが…

ノーデ:王位継承者である従兄弟と自分は結婚すべきだとの考えに固執して、人生を誤ってしまう悲しさももつ。

宮廷に潜む未来のフロンド派 要注意人物

ジャック:この人、フロンドの乱の最後の最後で重要な役割を果たすのですよね?

ノーデ:それはまだ先の話

ジャック:このボルドー遠征にも宮廷に同行しています。

ノーデ:ふむ…たしかに。

ジャック:しかし、どうも物見遊山。

ノーデ:え?

ジャック:日記を見てしまったんです、マドモワゼルの。

ノーデ:それで、なんて?

ジャック:しょっちゅう退屈してるって…

ノーデ:あっちゃ〜。

ジャック:で、うっすらと反マザラン。

ノーデ:まあ、親マザランにはならんでしょう。

ジャック:コンデ夫人に対しても、もう、けちょんけちょん。

ノーデ:お、おう…

ジャック:ダサダサだって。

ノーデ:なにが?

ジャック:服が…

ノーデ:容赦ないな。

ジャック:あの謝罪の場面でも、笑いを堪えるのが大変だったって。

ノーデ:どれだけバカにしているのだ…

ジャック:一方で、王妃様御一行は花火と大砲の鳴り物入りでボルドー市に迎えられたとか。

ノーデ:歴史家の先生方の記述とは少々異なるようだな…

ジャック:歓迎のために信じられないほどの人が集まっていたとか。

ノーデ:まあね、ものは見方によって変わるから。

ジャック:それでね、煽るんですよ、ボルドー市の代表たちを。

ノーデ:なんと言ったんだ、マドモワゼルは。

ジャック:もし、和平に際しての約束が守らないようなことがあれば、王妃様に直談判し、また武器を取って蜂起すればいいのよ、って。

ノーデ:やれやれ…。王妃様が「マドモワゼルが恐ろしいまでにフロンド派に肩入れしている」とこぼすのも当然だな。

ジャック:すでに、内乱の終盤におけるマドモワゼルの行動の片鱗がみられますね。

マドモワゼル、あるいはアンヌ=マリー=ルイーズ・ド・ブルボン=オルレアン


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