1650年12月22日―12月31日

舌先三寸男もひとつ噛ませてもらいたい

本の行商人ジャック:ノーデ先生、パラティーヌ公女はどうやらシュヴルーズ夫人だけでなく、ゴンディ協働司教も巻き込もうとしているらしいですよ。

ノーデ:ゴンディ協働司教、のちのレ枢機卿。この人はフロンドの乱でほんとうによく動いてくれたものよ。

ジャック:ゴンディ協働司教は枢機卿の帽子がほしい。

ノーデ:その件に関しては、すでに宮廷がパリに戻る前から、シュヴルーズ夫人がロビー活動を始めている。

ジャック:ほしいのは枢機卿の帽子だけじゃない。その先にはマザラン枢機卿に取って代わることを狙っている。

ノーデ:そのあたりも見え見えで、もはや知らぬ人は誰もなかろう。

ジャック:どうやらゴンディさん、さっそくムッシューとコンデ親王らの仲介役を買ってでたみたいです。

枢機卿はパリに戻らぬよう忠告を受けるが…

ノーデ:いよいよ反マザランのお仲間たちが協力しあい、枢機卿を排除するためのスクラムを固めてきたな。

ジャック:前線にいる枢機卿の耳にもそれは入っているはずなのですが…

ノーデ:なにせあの性格なので、ノンシャランと気にもとめていないようなのだ。

ジャック:ご友人のなかには忠告なさる方はいらっしゃらないのでしょうか?

ノーデ:いや、すでにパリへは戻らぬ方がよいとのご忠告も受けているようだよ。

ジャック:高等法院ではコンデ親王らを釈放すると同時に、マザラン枢機卿を追放するという方向で詰めているようですし、心配です。

北の戦況は有利でも、反マザランの勢いは止まらない

ノーデ:しかし、北の戦況はきわめて有利に展開している。勝利を神に感謝するためにノートルダム大聖堂でテ・デウムを歌うことになった。

ジャック:王様はそこに高等法院の方々もお招きになったようですね。

ノーデ:うむ。マザラン枢機卿は国王軍の栄光を讃えるために戦利品を飾って見せたのだが、かえってそれが彼らの怒りを煽ることになったようだ。

ジャック:なにをやっても、悪く取られるのです。

ノーデ:そういうものさ。

ジャック:これじゃ、先行きどうなることか…

パリ高等法院がついに重い腰をあげた

ノーデ:どうも、いやな雰囲気になってきたぞ。

ジャック:といいますと?

ノーデ:パリ高等法院は長い審議の結果、ついにコンデ親王らの幽閉に関して態度を決めたようだ。

ジャック:年の瀬も押し迫ってから…。来年、年が明けるまで待てなかったんですかね。

ノーデ:無実の罪で囚われている御三方を釈放するよう、王妃様に正式に申しあげると決めたそうだ。

ジャック:パリ高等法院は王様に意見をする権利が認められていますからね。建白権でしたっけ?

ノーデ:そうだ。

ジャック:動き出しましたね。

そしてムッシューもマザランを出禁にしろと王妃に迫る

ノーデ:動いたのはパリ高等法院だけじゃないぞ。

ジャック:…って、もう今日は大晦日ですよ。なんだって、こんな時期に。

ノーデ:フランスには「正月」というその年の神様をお迎えする習慣はないのだ。

ジャック:そういう民俗学的な比較はいいですから、いったい、何が動いたのか、教えてくださいよ。

ノーデ:ムッシュー、つまりオルレアン公がもうパレ・ロワイヤルにはうかがわないと宣言したのだ。

ジャック:ムッシューはなんだって言うんです?

ノーデ:マザラン枢機卿がいるかぎり、会議に同席はしないと。しかも、それをシュヴルーズ夫人の屋敷に国璽尚書のシャトーヌフさんやル・テリエさんを呼びつけて言ったそうだ。

ジャック:もう完全にシュヴルーズ夫人の手のひらで転がされているじゃありませんか、ムッシュー。

ノーデ:シャトーヌフさんとル・テリエさんはすぐさま王妃様に報告した。

ジャック:王妃様はなんと?

ノーデ:それはまちがったお考えだと伝えるようにおっしゃった。

ジャック:で、ムッシューはなんと?

ノーデ:勇気を奮い起こして、王妃様に会うためにパレ・ロワイヤルに参上した。

ジャック:えぇ、宮殿に来るんかい? もう気が変わったの? そこにはマザラン枢機卿がいるのわかってるのに?

ノーデ:そして、控えの間でマザラン枢機卿に会った。

ジャック:ガン無視?

ノーデ:いや、普通に挨拶を交わしていた。

ジャック:なんだよ、もお〜。

ノーデ:さて、来年はいよいよ、この2人に注目が集まりますぞ!

ジャック:来年の「フロンド日めくり」もどうぞよろしくお願いします。

ノーデ:みなさまも、どうぞ良いお年を!また、お目にかかりましょう。