1650年12月8日―12月14日

パリ高等法院はもはやカオス

ノーデ:なにやら、高等法院の前が騒がしいのだが…

本の行商人ジャック:なんでも、幽閉中の御三方からの署名入りの手紙を届けに来た人がいるとかで、もめてます。

ノーデ:それは本当にコンデ親王らからの手紙なのか?

ジャック:それがどうもよくわからないのです。

ノーデ:たしか、ロングヴィル公爵の娘さんからも、釈放してほしいとの訴えが書面で出されているよな。

ジャック:そういったことが重なって、高等法院は今、ちょっとごたごたしていますよ。コンデ親王夫人からの夫を返せの訴えも審議しないといけないわけですし。

ノーデ:王妃様はまだご体調がすぐれないにもかかわらず、国璽尚書などを呼んで御前会議を開かれた。

ジャック:王妃様の長引くご病気はなんなのでしょう?

ノーデ:それなんだが…ひとりの医師がいうには、どうもお腹のなかに膿をもった腫れ物があったという話だ。

ジャック:え、それはたいへんじゃないですか…

ノーデ:幸い王妃様はすでに危険な状態を乗り越えられたとのことだが、お熱は完全に下がらない。

テュレンヌ元帥が北から攻めてくる

ジャック:そんな状態で御前会議ですか…

ノーデ:ムッシューつまりオルレアン公はそれには出席していないらしい。

ジャック:高等法院では、なんでもフロンド派とコンデ派の間がもつれ、互いに罵りあっているとか。その合間にマザランを倒せと叫んでいるようなありさまで。

ノーデ:まぁ想像はつくが、ありとあらゆる罵詈雑言を枢機卿に浴びせているのだろう。

ジャック:民の安寧を乱すものというお得意の糾弾ですよ。

ノーデ:国の治安を悪くしているのはどちらだろうねぇ。

ジャック:こうなると、またぞろムッシューつまりオルレアンにおでましいただかなければなりませんかね?

ノーデ:ふうむ、マザラン枢機卿にとっては、きびしい状況だ。

ジャック:そんなときに、スペインの援軍を得たテュレンヌ元帥が北から迫って来ているわけですね。

ノーデ:じつは事態は切迫しているのだよ。ランスからほど遠からぬルテルの町が敵方に落ちそうなのだ。明日にも王軍は撤退するかもしれん。

ジャック:まったくもって、マザラン枢機卿にとっては前門の狼後門の虎というところですね。

ノーデ:デュ・プレシ元帥がどこまで敵の攻撃に耐えられるかだな…

アンリ・ド・ラ・トゥール・ドーヴェルニュ (テュレンヌ子爵)

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