1650年3月2日−3月8日

徒労に終わるのか、支持者たちの解放運動

ノーデ:逮捕された3人の王族を支持する人たちもパリにはいた。コンデ親王の支持者たちは黙って指をくわえてみていたわけではない。

本の行商人ジャック:しかし、形勢は不利なのでは…

ノーデ:そのとおりだ。たとえば3人の王族の家来たちは、とある高等法院の評定官に接近し、兄弟のために長官職を欲しがっているのを知っていたので、コンデさんたちが釈放されるように助けてくれるなら、お望みが実現するよう力を貸そうなどともちかけた。

ジャック:あぁ、あの人ですね。なんでも首をつっ込みたがるから。

ノーデ:しかし、フロンド派はまったくダメだ。今や、とにかく、王妃様の側についているふりをするばかり。

ジャック:見ないふりをして、やりすごしたい人ばかりですな。

ノーデ:ル・コワニュー議長のご子息は、昨年のサン=ジェルマン=アン=レーでの和平の時に、高等法院が求めて国王が受け入れた「何人も裁判を受けずには拘束されない」という約束を持ち出して、法廷で裁判するように訴えた。だが、同僚たちから得られたのは、口笛のやじだけだったそうだ。

ジャック:自分たちが求めたことなのに?

ノーデ:そういうもんなんだな…

プランセス・パラティーヌの瞳の輝きが味方を増やす?

ジャック:しかし、支持者の努力は報われませんね。

ノーデ:いやいやいや、そうでもないんだ。プファルツ選帝侯につながるプランセス・パラティーヌ、つまりアンヌ・ド・ゴンザーグ・ド・クレーヴは、拘束されている3人にひじょうに同情的で、なんとか手紙のやりとりができるようにルートをつくり、自宅に支持者を集めて、彼らの解放について話あった。

ジャック:プランセス・パラティーヌはコンデ親王に首ったけという噂もありますからね。しかし、まぁ、プランセス・パラティーヌがいくら目をうるうるさせても、3人を脱走させるには、それだけじゃ足りませんやね。

ノーデ:しかし、彼女の瞳はきわめて美しいという評判だぞ。ジャックはそれに恋の力をしらない…

ジャック:そういう問題じゃなくて、敵が大きすぎるというか、陰謀を企てるにしても相当の覚悟と才気と手段がいるってことですよ。

ノーデ:いやいや、ジャックよ、あの瞳はあなどれない。たいへんな武器なのだよ。まあ、お聞き。プランセス・パラティーヌは3人を解放するには、フロンド派を引き入れることが必須だと考えた。

ジャック:いったい誰を引き入れるというんです?高等法院には完全にそっぽをむかれているのに。

ノーデ:シュヴルーズ夫人さ。彼女の娘をコンティ公と縁組させようともちかけた。大成功!

ジャック:しかし、シュヴルーズさんだけでは…

ノーデ:待て待て、そこがプランセス・パラティーヌの才能なのだ。皆、大なり小なり、野心をもっている。そこをうまくつくのだな。

ジャック:他には誰が誘惑されたんです?

ノーデ:ヌムール公さ。コンデ親王とは友人であり、かつ大のマザラン嫌い。この人は友人の解放のために最も尽力してくれていた。その他に何人も味方を見つけてきたのだ。

ジャック:プランセス・パラティーヌはそういう人材を掘り起こしていく才能があったのですね!

ノーデ:しかし、御三方を解放させるのは、至難の業だぞ…

プランセス・パラティーヌ アンヌ・ド・ゴンザーグ

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