1650年3月23日−3月29日

国王の行幸は課税とワンセット

本の行商人ジャック:宮廷は、地方に戻ったコンデ派の大貴族たちの動きをどう封じ込めるつもりでしょうか?

ノーデ:王妃様は危険な動きを見せる地方には、直々に総督を送り込み牽制している。

ジャック:王様が成年式を迎えられるまでは、なんとしても貴族たちの反乱、蜂起を防がねばなりませんからね。

ノーデ:ところで、その王様だが、ルーアンへ出向かれたのは大成功だった。

ジャック:あれでロングヴィル公爵夫人の出鼻をくじいた。

ノーデ:誰が支配者かを人々に知らしめる必要があるのだ。しかし、ノルマンディー地方に関しては、マザラン枢機卿にはまた別の目論見もあった…

ジャック:と、いいますと?

ノーデ:ノルマンディーは王国一の豊かな地方なのだよ。

ジャック:まさかのまさか?

ノーデ:ちょいと絞れば、国庫も潤う…

ジャック:枢機卿はそろばん勘定の方でも抜け目がありませんね。

ノーデ:宮廷の滞在中にルーアン高等法院は、ノルマンディーの3つの納税区に対し追加で300,000リーブルの課税をする法案を登録した。

ジャック:うぉぉぉ、ぼったくり!

ノーデ:したがって、王様のルーアン行きはたいへん大きな収穫があったのだ。

なにもかも、国王陛下の成年までの辛抱なのだ!

ジャック:とはいえ、とはいえ、パリに帰れば、またぞろ口うるさくてやっかいなフロンド派が待ち構えていますよ。

ノーデ:対コンデで束の間の同盟を結んだはいいが…

ジャック:マザラン枢機卿お気に入りの国璽尚書、セギエさんを解任して、シャトーヌフさんを後任に据えることになったのも、フロンド派への忖度ですかね?

ノーデ:シャトーヌフさんもまた、舌先三寸のゴンディ協働司教、のちのレ枢機卿に負けないくらい宰相の座を狙っている。

ジャック:そうはいっても、シャトーヌフさんはもう還暦過ぎですよ。まだそんな野心をお持ちなので?

ノーデ:お身体はすこぶるお元気よ。さっそくマザラン枢機卿に難癖をつけて困らせているらしい。

ジャック:もうひとつの人事で、王妃様は、高等法院で一番過激なフロンド派として知られる評定官、ブルーセル氏のご子息をバスチーユ監獄の責任者に任命されたようですね。あそこにはたしか、パリ脱出を試みたブイヨン公爵夫人が収監されているはず。

ノーデ:まあ、それもこれも、国王陛下が成年に達するまでの辛抱だ。あと一年ちょっと。

ブルゴーニュ地方がきな臭い…

ジャック:3月に入って、また宮廷は地方に出ます。今度はブルゴーニュだそうです。

ノーデ:ブルゴーニュ地方はコンデ親王が総督を努めていたところで、あそこにはコンデ支持者がたくさんおるのだ。

ジャック:時期的に旅行するには不向きな季節ですし、幼い王様のご身体が心配です。

ノーデ:このご旅行にはいろんな理由がつけられているようだが、フロンド派がやいのやいのと口出ししてくるパリを離れるだけでも、マザラン枢機卿としては、息抜きになろう。

ジャック:枢機卿はそれだけじゃなくて、先月のノルマンディーで成功したように、ブルゴーニュからも追加で税を徴収しようと目論んでいるのではありませんか?

ノーデ:ビンゴだよ!ジャック、よくわかったね。16日に、宮廷がディジョンに到着するやいなや、マザラン枢機卿は州の三身分会議を招集して、財布の紐をむりやりこじ開けようとした。

ジャック:ひょえ〜!ところで、州の三身分会議というのは、全国三部会の地方版みたいなものという理解でよいでしょうか?

ノーデ:大雑把にはそれでよいかな。

ジャック:それにしたって、ずいぶんと前のめりじゃありませんか、到着早々に「金出せ、金!」ですか…

ノーデ:いや、それぐらいじつは切羽詰まってるのだ。

ジャック:いったい何が起きているのです、ディジョンで?

ノーデ:それは来週のお楽しみ!

フロンドを踏みつけるルイ14世(Louis XIV écrasant la Fronde)ルーヴル美術館所蔵
フロンドを踏みつけるルイ14世(Louis XIV écrasant la Fronde)ルーヴル美術館所蔵


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