1650年3月9日−3月15日

ポール・ド・ゴンディ協働司教の野望と承認欲求

本の行商人ジャック:ところで、ノーデ先生、コンデ親王逮捕で社会に平穏が戻るとは考えられないんですが?

ノーデ:なんだ、ジャック、なにを心配している。

ジャック:昨年のパリ包囲で酷い目にあったので、フロンド派は反コンデに傾いていて当然。それはちょうど宮廷内でのパワーバランスからコンデ排除を目論んでいたマザラン枢機卿や、個人的にちょっとコンデ親王やその周辺にムカついていた王妃様とは利害が一致。

ノーデ:たしかに、たしかに。

ジャック:とはいえですよ、コンデさんが排除された今、このフロンド派と宮廷の蜜月は続くのでしょうかね?

ノーデ:それは…かなり危うい。つか、ムリ…だと思う。

ジャック:でしょう? とりわけ、この機に宮廷に急接近してきてるポール・ド・ゴンディ協働司教には気を許すわけにはいかないのではないかと。

ノーデ:ゴンディ協働司教は喉から手が出るほど枢機卿の帽子が欲しい。だが、その先の目標はマザラン枢機卿を追い落として自分が後釜に座りたいのだ。ただひたすらに権勢が欲しいのだよ。

ジャック:わかりやすいといえば、わかりやすい人ですがね。

ノーデ:パリ高等法院と宮廷の仲介者のような顔をしながら、一方で民衆を煽っていた。

ジャック:それに承認欲求のかたまりでもあるのですよ。

ノーデ:召使いに買いに行かせたマザリナードを朝ごはんの時に読むのが楽しみだそうだ。

ジャック:元祖エゴサ!

ノーデ:マザラン枢機卿の地位を奪いたいという野望が原動力で、もうそれが生きる支えになっているようなところがある。

「ゴンディ一味」は軍事力がないけれども厄介

ジャック:それはもう、みなさんの目にも明らかなんですよね?

ノーデ:それがために、マザラン枢機卿はゴンディ協働司教を宮廷に近づけるのはためらっておられた。

ジャック:でしょうねぇ。「ゴンディ一味」なんて呼ばれて、あからさまにみんなから警戒されてますよ、あの人。

ノーデ:しかし、枢機卿にとっての脅威は、「ゴンディ一味」の方がコンデ親王よりはるかに小さい。

ジャック:舌先三寸の説教で民衆煽動には長けていましたが、コンデ親王のように軍隊を動かせるわけでもなく物理的な力はありませんからね。

ノーデ:それになぁ、ジャックよ、宮廷はまだ、前半のフロンドの痛手から立ち直れていないのだよ。

ジャック:王様はまだ成年に達していないし…

ノーデ:王権は弱いままといえるのだ。

ゴンディ協働司教(レ枢機卿)
ポール・ド・ゴンディのちのレ枢機卿


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