1650年4月13日−4月19日

ラ・ロシュフーコー公爵特別インタヴュー

ラ・ロシュフーコー公爵が語る(1)

ノーデ:本日はまことにお忙しいところ、インタヴューを受けていただき、たいへん恐縮に存じます。

本の行商人ジャック:このインタヴューは、手前、本の行商人ジャックがエアー・マザリナードとしてポンヌフの橋のたもとで、責任をもって配布いたす所存でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

ラ・ロシュフーコー:今、ちょっと取り込んでいるのよ。

ノーデ:さようでございましょうとも、なにしろコンデ親王ほか、コンティ公、ロングヴィル公爵が逮捕されたまま、先が見えない状況でございますからねぇ。

ジャック:お亡くなりになったお父上のご葬儀の方はとどこおりなくお済みに? 噂で耳にしたのですが、会葬者には武装してくるようにお願いしたとか…

ラ・ロシュフーコー:なんだ、お前さん、地獄耳だな。

ジャック:これでも生き馬の目を抜くパリの情報屋、マザリナードの行商人ですから。

ラ・ロシュフーコー:いや、なに、皆で狩りをしたいと思うたのよ。貴族のたしなみと親睦をかねて。

ジャック:親睦とたしなみ、ふ〜ん、そうですかね…

ノーデ:とはいえ、狩りは皆で獲物を追ううちに、興奮してくるものではありませんか?

ラ・ロシュフーコー:たしかにそういうことも自然な流れとしてあるな。

ジャック:気分があがったところで、皆で鬨の声をあげちゃおうなんて気分になったりもしませんか?

ラ・ロシュフーコー:貴族の狩りは戦闘訓練でもあるからして、ありえないことではないな。

ジャック:やっぱり…葬儀を利用して、集まった貴族たちをのせたんじゃないですか?バレバレですよ。

ラ・ロシュフーコー:ぶっちゃけ「ここで反宮廷で団結しましょうね〜、みなさん」なんていったら、みんな引くでしょ?誰もついてきてくれませんよ。

ノーデ:じょうずに貴族たちをのせましたねぇ。

ラ・ロシュフーコー:知略といってくれたまえ。

ソーミュールの蜂起失敗

ノーデ:ところで、ノルマンディ、つぎにブルゴーニュとコンデ支持者の蜂起はことごとく潰されてしまいました。ソーミュールでも同時期に火の手があがっていましたが…

ラ・ロシュフーコー:コンデ親王逮捕の知らせを受けるとすぐに、コンデ親王妃の父、ブレゼ元帥がソーミュールの町を奪った。だが、その直後に元帥が亡くなられるという不幸に見舞われてしまったのだ。あれは2月の半ばごろであったか。

ノーデ:それはまことに不運としかいいようのないことでございますね。頼りになるお方でしたのに。

ジャック:すでに軍務から引いておられたとはいえ、ブレゼ元帥はまだ52歳。ご老体というにほどのお歳でもなかったですよね?

ラ・ロシュフーコー:ジャックよ、いくら貴族は肉が食えて栄養がいいといっても、軍務というのは身体を酷使するものなのだ。早すぎる死とはいえまい。

ノーデ:ソーミュールはロワール川の要衝ですね。

ラ・ロシュフーコー:そうなのだ。ブレゼ元帥亡き後も、その部下らとともに攻防戦を展開したのだが…王妃様の送ってこられた新しい州総督に町も城も奪い返されてしまった。ソーミュールでも、ディジョンのように、町の住民が国王軍の側についたのだ。敗北じゃよ。無念だが。

ジャック:1650年春の時点では、どうにもコンデ支持派は劣勢を否めなかった。

ラ:ロシュフーコー:いかにも…。それに私の行く先々にはおふれが回っていたのだ。

ジャック:そうそう、4月9日付けで、南のアングレームの市長宛に、ラ・ロシュフーコーが騒動を起こしそうだから、門を閉じ、3ヶ月分の食糧を確保せよと、王様から通達があったそうですよ。

ラ・ロシュフーコー:まったく、先回りしてご丁寧な配慮をいただき恐悦至極であるな。

ジャック:しかも、このおふれの中で公爵は依然としてマルシアック公子と名指されています。

ラ・ロシュフーコー:つまりだ、フランス王国はまだお前を公爵として認めてないぞという意思表示なのだよ。

ロシュフーコー城にあるフランソワ(6世)・ド・ラ・ロシュフーコーの肖像

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