パリのいたるところに現れた民衆蜂起をうながすテュレンヌ元帥の貼り紙!
それって貼り紙テロ⁉︎
本の行商人ジャック:ノーデ先生、たいへんです!
ノーデ:なんだ、どうした、ジャック、そんなに慌てて?
ジャック:いたるところにテュレンヌ元帥の貼り紙が!
ノーデ:なんと!
ジャック:パリ市民に蜂起を呼びかけています。
ノーデ:元帥が自分で書いたのだろうか…
ジャック:さあ、それはどうだか…
ノーデ:コンデ派の手のものが書いたのかもしれんな。
ジャック:マザラン枢機卿への罵詈雑言と、レオポルト大公への賛美。
ノーデ:レオポルト大公が圧政からの解放者というわけだな。
ジャック:そのイメージは北部からの避難者の間で囁かれている噂と一致します。
ノーデ:そういうイメージを作っているのかもしれんぞ。
ジャック:こういう貼り紙は、大抵の場合、数日のうちに消えるものですが、そのあとで本格的なマザリナード文書がばら撒かれたりするのですよね。
ノーデ:先に貼り紙をして民衆がどんなリアクションをするか、見ているのだ。
ジャック:ふつうの文書を刷ることに比べたら、貼り紙は圧倒的に少ない数ですが、その影響力はあなどれない。
貼り紙という名のマザリナード
ノーデ:マザリナード文書も深夜密かに印刷機を動かして刷るから質の良いものではないのだが、貼り紙も印刷物としてはぎりぎりの品質。
ジャック:刷ったら、すぐに貼らないと。
ノーデ:だいたいが、深夜か早朝の薄明かりなかで貼られるのだ。
ジャック:貼りだされる場所は、人の往来が多い場所。
ノーデ:となると、ポン・ヌフの橋の欄干だ。
ジャック:そして教会前。
ノーデ:一番目立つのはノートルダム大聖堂だ
ジャック:9月4日のテュレンヌ元帥の貼り紙はパリのいたるところに貼られたのですが、聖イノサン教会では扉に貼られていたとのこと。
ノーデ:それはいい!4日は日曜日だから、教会には人が集まってくる。
ジャック:もっとも人目につくところを狙ったというわけですね。
ノーデ:じつは貼り紙というのは、また別の貼り紙を呼ぶという性質がある。
ジャック:そのせいか、フロンドの乱始まって以来のこの夏の貼り紙!
ノーデ:そして貼り紙はコンデ派の得意とするところでもある。
ジャック:少ない印刷量で、最大の効果が期待されるのが貼り紙ですよね。
ノーデ:それで、どんな感じなのだ、反響は?
ジャック:それはもう、たいへんな騒ぎですよ。
ノーデ:ほう!
ジャック:この貼り紙を剥がそうとした人が民衆に襲われて、ひとり死人がでました。
ノーデ:なかなか過激だな。
ジャック:それだけじゃありませんよ、ノーデ先生。ポン・ヌフではマザラン枢機卿の人形が焼かれています!
ノーデ:諸悪の根源、マザラン枢機卿を成敗するというわけだな。
ジャック:反マザランで民衆蜂起をうながせば、凶器になりますよね。

