1650年9月22日―9月28日

ボルドーでは和平にむけて交渉中

本の行商人ジャック:先生、そろそろボルドー情勢にもどりませんと。

ノーデ:そうだな、ジャック。

ジャック:ボルドーと宮廷側の話し合いはどうなったのでしょうか。

ノーデ:和平交渉は難航しているようだな。

ジャック:ここはひとつマザラン枢機卿にも少々譲っていただかないと、ダメなんじゃないでしょうかね?

ノーデ:お留守番のオルレアン公、ムッシューがパリ高等法院の提示する条件を推しているよ。

ジャック:ボルドーの高等法院も裕福なブルジョワの方々の意見を入れて、過激派の評定員の意見を退けているもようです。

ノーデ:北の方からも、スペインのレオポルト大公がムッシューに包括的な和平を提案してきており、ムッシューもちょっとその気になっているらしい。

ジャック:スペインの甘言には要警戒ですよ。

ノーデ:そうしたこともあるから、宮廷としてはボルドーの案件は早いとこ納めたい。

ジャック:和平のためには、コンデ親王夫人やご子息、ブイヨン、ラ・ロシュフーコー両公爵がボルドーから立ち退いていただく必要がありますよね。

ノーデ:そればかりではない。今後、国王の派遣する代官などに武力で抵抗することがないようにという条件も付け加えられるだろう。

ジャック:その代わりといってはなんですが、宮廷側からは、それぞれの貴族の方にご領地へ戻ってよろしいという許可を出さないといけませんね。

ノーデ:あと、嫌われ者の現総督、エペルノン公爵は正式にお役御免とせざるをえないだろう。

マザラン枢機卿は和平のための妥協にご不満

ジャック:エペルノン公爵解任をのまされるなど、マザラン枢機卿としては耐え難いでしょうね?

ノーデ:どうもだいぶご立腹のようだ。実際、パリに残っているル・テリエさんに手紙で愚痴っている。

ジャック:そうでしょうとも。

ノーデ:王様のお姿を見せることもそれなりの効果があったはずなのに、結果がこれかと。

ジャック:しかし、北からテュレンヌ元帥とレオポルト大公が攻めて来ているのですから、ボルドー問題に時間を取られるわけにはいかないでしょう。

ノーデ:だが、どうも、宮廷の旗色が悪い気がする。

ジャック:この和平は、どの道、妥協の産物ですよ。

ノーデ:これでボルドーがおさまるとは思えないのだ。

ジャック:一時的であるにせよ、ともかくここで和平のために、反乱軍と手打ちをしておかないと。

ノーデ: その反乱軍にしても、遺恨を残しているはずだ。

ジャック:コンデ親王らの釈放は聞き入れられず…

ノーデ:領地へ帰ってよいと言われても、その領地や城が荒らされている。

ジャック:ラ・ロシュフーコー公爵の場合は、宮廷がボルドーへ南下する道すがら、国王の命令でヴェルトゥイユの城館を徹底して破壊されていますからね。

ノーデ:金銭の問題じゃないのだよな。

ジャック:国王側からすれば、誰が支配者か見せしめにするという意味がある。でも、やられた方はたまったものじゃない。

ノーデ:大貴族の方々は当分おとなしくなりそうにないな。

マザランの彫像、フランス学士院にあるマザラン枢機卿の墓の彫刻から(当プロジェクト撮影)