1651年2月8日―2月14日

ゴンディはいかにして枢機卿を追い詰めたか

本の行商人ジャック:ノーデ先生、枢機卿が6日の深夜にパリを脱出なさり、サン=ジェルマン=アン=レーへ向かわれたとのこと。事態が急変しましたね。

ノーデ:よく脱出できたな。フロンド派がマザラン枢機卿を逃すまいとして見張っていたはず。

ジャック:それにしても、何が起きたんでしょうね?

ノーデ:宮廷に潜入している特派員を呼んで報告してもらおう。

ジャック:久々のフランケンウサギ花ちゃんの出番ですね!

ノーデ:日めくりが週刊になってから、なかなか出番がなかったからのぉ。

王妃様を孤立させたゴンディの悪知恵

ジャック:花ちゃん、来ました!

ノーデ:いったいぜんたい、どうなっているのだ?

フランケンウサギの花ちゃん:いやぁ、どうもこうも。わたしもびっくりですよ!

ジャック:とはいえ、なにか兆候はあったのだろう?

花ちゃん:暮れあたりから、枢機卿とムッシュー、オルレアン公の間がぎくしゃくしていたことはご存知でしたよね?

ノーデ:ああ、たびたび、ムッシューがマザラン枢機卿とは会いたくないとかごねていたが。

花ちゃん:その裏にゴンディ協働司教、すなわちのちのレ枢機卿がいたのもご存知ですよね?

ジャック:あの舌先三寸男がこのところ宮廷にいりびたり、ことさらにムッシューにべったりだったことは誰もが知っていますよ。

花ちゃん:そして、ゴンディ協働司教が前半のフロンドの乱でも民衆と高等法院を煽りに煽っていたのは覚えていますよね?

ジャック:よーく覚えているさ。

花ちゃん:とすれば、話は早い。あのゴンディがまたやってくれたのです。

ノーデ:なんと…

花ちゃん:コンデ親王らの釈放を求めるという旗を振り、まんまと反マザランに人々を誘導し、表にはムッシューを立てて傀儡子のように操り、王妃様を孤立させた。

ノーデ:あー、ちょっと待ってくれ。もう少し詳しく。

機を見るに敏なゴンディの攻め

花ちゃん:高等法院などが建白しても、王妃様は頑としてコンデ親王ら御三方の釈放には首を縦にふらなかった。臣下の分際で自分に意見するなどもってのほか…と不快に思うばかりでした。だから、何をいわれても無視。枢機卿の罷免も、同様に拒否なさっておいででした。ところがです…

ジャック:ところが?

花ちゃん:2月に入って早々に、ゴンディ協働司教、のちのレ枢機卿が高等法院の大法廷で演説をしたのです。そのとき、コンデ親王らの釈放なくして、王国の平安も、民の平穏も得られないと説いた。

ノーデ:それは前から言っていたのでは?

花ちゃん:しかし、今回は、これはムッシュー、つまりこれはオルレアン公の命を受けて皆様に申し上げていると宣ったのです。そして国王もこれに同意されているとぶちあげた。この演説に高等法院の人々は驚きました。だって、ムッシューが王妃様の意向にさからうなどありえないと思っていたのですもの。

ジャック:それに、ムッシューはコンデ親王逮捕をよろこんでいたはずでは?王族として最有力のライバルだったから…

ノーデ:どうせまた、ゴンディ協働司教が勝手にでっちあげて言っていたのだろう?

花ちゃん:ところが、その場にいたボーフォール公爵が協働司教の言うとおりだと、その言葉を裏づけた。(小声で)ほんとうに知っていたかどうかは知りませんが…

ジャック:出た、「市場の王」、フロンド派王族のボーフォール公。

ノーデ:王族がそう言うのだから、本当だろうと、皆思うだろうな。

のせられるおめでたいムッシューことガストン・ドルレアン

花ちゃん:さらに、協働司教はそのすぐあとにムッシューのところに駆けつけまして、この演説がいかに人々を感動させ、今や、皆、ムッシューを褒め称えるばかりですと伝えたのです。

ジャック:それでムッシューは…

花ちゃん: 協働司教から聞かされる反響に、自分は何か英雄的なことをしているかのような気分になった。

ジャック:単純。

花ちゃん:相当良い気分になって、ムッシューはいそいそと王宮へやってきます。マザラン枢機卿はゴンディの振る舞いを激しく非難しました。が、そのときに…

ノーデ:気をもたせるな!

花ちゃん:マザラン枢機卿はちょっと口が滑ったのです。

ノーデ:口が滑った?

花ちゃん:イギリスの清教徒革命になぞらえて、高等法院とパリ市民たちは、全員、クロムウエルとフェアファックスだ。王と王家の血に恨みを抱いている。そしてイギリスで起きたようなことをフランスにも起こそうとしている。共和制にしたいのだ…と言ったとか、言わないとか。

ジャック:ぎょ!

花ちゃん:高等法院ジャーナルにはそう書かれてしまっていますけれどね。本当にそうおっしゃったかどうかはどうでもいいのです。そこで、ゴンディはこの発言を利用し、尾ひれをつけ、国王への侮辱として拡散しました。それはだんだんとひどい中傷になり、「枢機卿を逮捕しろ」「高等法院に呼びつけて謝罪させろ」「フランスの名誉を傷つけたことを罰せよ」との声が…しまいには市中で「王様、万歳、マザランは失せろ!」の大合唱になります。(続く)