1651年1月11日―1月17日

コンデ親王らの釈放を求めて奔走するパラティーヌ公女

ノーデ:さて、マザラン枢機卿への憎悪が高まるなか、コンデ親王ら御三方の釈放問題は、今後、どのように展開するのでしょうか?

ラ・ロシュフーコー:そこよのぉ、頭が痛いのは…。枢機卿はがんとして釈放には応じない腹なのだ。

本の行商人ジャック:ラ・ロシュフーコーさんとしても、じっとしてはいられないでしょう?

ノーデ:噂では、一途にコンデ親王らの釈放を求めるパラティーヌ公女様が、あらゆる手を使って交渉の糸口をさぐっていらっしゃるようですな。

ラ・ロシュフーコー:まさにそこなのさ。反マザランでは一致しているものの、じつは皆それぞれに思うところがあって、利害も対立している。

ジャック:そういう人たちをひとつの目的にまとめるってのは、むずかしいですよね。

ラ・ロシュフーコー:ふむ、わかっているじゃないか、ジャック。

ジャック:まとめようにも、利害の対立から相互に不信感を抱きやすい…

ラ・ロシュフーコー:そういう不信感を回避できるかどうかが成功の鍵なのだ。

ジャック:あ、それでラ・ロシュフーコー公爵が密かにパリに戻って来ているわけですね。

ラ・ロシュフーコー:バレてた? そう、世は、今、パラティーヌ公女さんのところに来ておるのよ。お願いされたら、引き受けんわけにはいかないだろう。

ジャック:おやおや、また公爵の騎士道精神発揮ですか。懲りないお方だな。これまでにお助けして、公爵が危ない目にあわされたのは、シュヴルーズ夫人でしょ、それからロングヴィル公爵夫人…

ラ・ロシュフーコー:言わんでよろしい、ジャック。若気の至りだ。

ジャック:いーや、いーや、一昨年、1649年のパリ包囲でもフロンド派のロングヴィル夫人をお助けして命の危険さえおかしたことを、もはやお忘れになっているのであるまいか(遠い目)

ラ・ロシュフーコー:と、まあ、反マザランでまとめる役をおおせつかったので、パラティーヌ公女邸まで出向いてまいったのだよ。

ノーデ:それで、うまくまとめることに成功なさったのですか?

ラ・ロシュフーコー:とりあえず、まず影響力のある人たちに会った。マザランをなんとか排除したいというのは共通するのだが…たとえばシュヴルーズ夫人

ジャック:インフルエンサーというのは、そもそも個性が強い人たちですからね。キャラが立っているというか。

キーパーソンはシュヴルーズ公爵夫人か、ゴンディか…?

ラ・ロシュフーコー:彼女は娘とコンティ公の結婚を切望している。さらに、シャトーヌフさんをマザランの後釜に据えて宰相にしたいのだ。そして、釈放されたあかつきには、コンデ公をギュイエンヌ総督に、コンティ公はプロヴァンス総督にしようというのだ。

ジャック:なんかこう、ご自分で描いた青写真をしっかりとお持ちのようで。

ラ・ロシュフーコー:一方、市場の王と呼ばれ、庶民の人気絶大、フロンド派貴族の暴れん坊、ボーフォール公はシュヴルーズ夫人の思い描く青写真にはまーったく興味がない。

ノーデ:目下、宮廷でムッシュー、つまりオルレアン公を陰で操るゴンディ協働司教、のちのレ枢機卿はどうなのです?シュヴルーズ夫人とも仲が良いでしょう?

ラ・ロシュフーコー:何よりもマザラン枢機卿を追い落として、後釜に座りたいという野心を燃やし続けているよ。だけど、どうやらシュヴルーズ夫人の娘に、その、なんというか恋心を抱いているらしい。それもあってか、シュヴルーズ夫人にべったりなのだ。

ノーデ:しかし、シュヴルーズ夫人は娘をコンティ公に嫁がせようとなさっているのでは?

ラ・ロシュフーコー:そこだよ。でも、これ以上はしゃべれない。この先のネタバレになるから…。

ジャック:ええええ、コンティ公との結婚は? レ枢機卿の純愛は? どうなってしまうんで? いやぁ、気になるなぁ…舌先三寸男の今後のふるまい。

ノーデ:ちょっと静かにしてくれないか、ジャック。それで、他のひとはどうなんです、公爵?

ラ・ロシュフーコー:シャトーヌフは昔からシュヴルーズ夫人のいいなりだが、どうもこの陰謀には積極的に関わらないつもりのようだ。とはいえ、うまくいったら、そのあとで夫人からなんらかのお役目を頂戴する準備はある。

ジャック:ってことはぁ…今のところ、シュヴルーズ夫人の影響力に注目ってことですかね?

ノーデ:そうみえるな。しかし、だからといって、思い通りになるとは限らないのが、この世の中なのだよ、ジャック。

ラ・ロシュフーコー:ノーデ先生のいうとおりだ。この先、2月に起きることを誰が予想しただろうか…

ジャック:え⁉︎ 何か起きるんですか? いやぁ、本の行商人、17世紀のメディア関係者としては、血が騒ぐなぁ。

(次回に続きます)

プランセス・パラティーヌ
アンヌ・ド・ゴンザーグ