1651年1月25日―1月31日

追い詰められるマザラン枢機卿、マザリナード文書では血祭りに⁉︎

本の行商人ジャック:ノーデ先生、いたるところでコンデ親王らの釈放を求める声があがって、まるでおさまる気配がない! 巷に出回っている印刷物では、マザラン枢機卿が残虐に処刑される場面が描かれ、いよいよ過激になって拡散していますよ。

ノーデ:マザリナード文書の誹謗中傷が止まらないな。なのに、枢機卿は対策を講じられないのだ。鷹揚というか、のんきというか。こちらは心配でたまらない。

ジャック:ノーデ先生は、いつもそのことで気をもんでいますね。

ノーデ:ほんとうに困ったことなのだ。マザラン枢機卿の側近の方にもお手紙で知らせて、なんとか対策を講じられるように進言しているのだが…

ラ・ロシュフーコー:ところで、そのマザラン枢機卿がグラモン元帥を呼ばれたようだが?

ジャック:そうそう、侍女たちの噂話ですけれども、枢機卿はどうやらコンデ親王と関係を修復しようとグラモン元帥をお呼びになったらしいですよ。

ラ・ロシュフーコー:ほう、それで、何を企んでいるのだ、あのタヌキは?

ジャック:コンデ親王を釈放したいと思っているというおつもりのようで。

ラ・ロシュフーコー:釈放したいと思っているだと? 

ジャック:そう。でも、オルレアン公が反対だと。

ラ・ロシュフーコー:おいおい、そりゃないだろう。そんな話、オルレアン公が怒りだすぞ。

ジャック:ですよねぇ…

ノーデ:じつは、もうひとつ、マザラン枢機卿が急いでやってしまおうとしていることがあるのです。

ラ・ロシュフーコー:あれか?

ノーデ:枢機卿の姪のひとりとメルクール公爵の結婚です。

ラ・ロシュフーコー:裏でヴァンドーム家が動いているな。

ノーデ:裏でもなにも、この縁談で、父親のヴァンドーム公には提督の地位を、もうひとりの息子であるボーフォール公には赦免を約束されたそうです。

ラ・ロシュフーコー:それで新郎のメルクール公爵にはカタローニャの副王をまかせるのだろう?あのタヌキめ。

政局の混乱とあっちもこっちもで増える政略結婚…

ジャック:ところで、シュヴルーズ夫人の娘さんとコンティ公の縁談の方はどうなっています? こっちは反マザランの同盟ですが、進んでいるのかな…。

ラ・ロシュフーコー:私はこの縁組にはあまり感心しない。コンティ公はすでにかなり乗り気のようだがね。お嬢さんが気に入ったらしい。いずれにせよ、この結婚には教皇様の許可が必要だ。許可を得るまでは実現できない。

ジャック:フロンド派と民衆もこのご縁談を応援しているようですよ。

ラ・ロシュフーコー:どうせ、またあのゴンディの野郎が煽っているのさ。

ジャック;出た!公爵の宿敵、民衆煽動の元祖、ゴンディ協働司教!又の名をレ枢機卿。

ノーデ:公爵のご懸念は、この結婚によりコンティ公がシュヴルーズ夫人とゴンディ、のちのレ枢機卿の陣営に取り込まれる…ということだとお見受けしますが。

ジャック:たぶん、コンティ公の姉君であるロングヴィル公爵夫人も同じように反対なのでは?

ラ・ロシュフーコー:コンティ公の方でもラ・ロシュフーコーとロングヴィル夫人が邪魔をするのではないかと警戒しているよ。

ジャック:じっさい、どうなのです、邪魔するおつもりで?

ラ・ロシュフーコー:ふふふふふ…

ノーデ:さて、この二組の縁談、どうなるのでしょうねぇ。

ラ・ロシュフーコー:まったく、世の中は観察するにはおもしろいが、いろいろ厄介ごとがおおいすぎて困ったものだ。

ジャック:落ち着いたら、ぜひ回想録をお書きになってください。売れますよ、これは。

ノーデ:公爵の考える人生の教訓もいただきたいものでございますねぇ。

ラ・ロシュフーコー:それはもっと先にいって考えることにしよう。

ノーデ:このたびは、1651年新春特別企画「ノーデの部屋」にお越しいただき、どうもありがとうございました。

ジャック:またお越しくださいね、公爵!