1651年10月18日―10月24日

ポートレートを刷新した本の行商人ジャックが語る(4)ちょっと寄り道 アジアの海

日本でキリスト教宣教師が受けた弾圧とフランスで新教徒が受けている迫害は似ている

ノーデ:そういえば、アジアの海にはポルトガル人が熱心に通っていたようだが…

本の行商人ジャック:ノーデ先生、それは16世紀。最近はちょっと事情がちがってきましてね。特に東アジアではオランダが幅を利かせています。

ノーデ:東アジアはカトリックの宣教師らがかなり熱心に布教活動をしていたのではないか?

ジャック:ノーデ先生、それも16世紀。どうやら情報の更新が必要のようですね。

ノーデ:そんなに変わったのか…

ジャック:東の辺境、日本では、しばらく前からキリスト教はけしからんということになっておりましてね。禁教になっているのですよ。

ノーデ:なんとまぁ! キリスト教は世界に向けて拡散するのではなかったのか?

ジャック:日本では弾圧されています。信者たちはひどい拷問を受け、改宗を迫られる。宣教師だって、見つかれば棄教か処刑ですよ。

ノーで:それじゃ、誰も布教には行かれないだろう

ジャック:無理。

ノーデ:ううむ、一方、我が国フランスではいよいよカトリック一択。

ジャック:そう、カトリック教会の長女を自認していますからね。宗教弾圧ということならフランスも負けてはいません。16世紀に新教徒がどんな目にあったかご存知でしょう? 

ノーで:それが16世紀で終わったわけではない。プロテスタントは常に異端と見做されている。

東アジアの交易事情あるいは出遅れたフランス

ジャック:それはそうとして、ポルトガル船はもう日本には入れませんけど、入れ替わりにオランダが長崎に商館を作っています。

ノーデ:なぜ、オランダ船は日本に来るのが許されているのだ?

ジャック:オランダは新教徒の国なのですよ。

ノーデ:新教徒だって、キリスト教徒だろうが?

ジャック:オランダは巧みにポルトガル人を悪く言って、私たちはカトリックの宣教師たちのように布教はいたしませんよ、通商に専念しますからねと、彼の地の最高権力者、徳川将軍に取り入ったのです。

ノーデ:なるほど、オランダ人は商売人だな。

ジャック:というわけで、現状、日本はオランダを通じてヨーロッパと繋がっているわけです。

ノーデ:とはいえ、我が国と通商の道はないものかねぇ?

ジャック:フランスはですねぇ、えーっと…残念ながら、アジアの海には完全に出遅れておりますよ。

ノーデ:そうなのか…

ジャック:努力はした。ルイ13世の時代にリシュリュー枢機卿はマダガスカルを拠点に、インド洋は進出しようと考えた。

ノーデ:おお、やるじゃないか!

ジャック:で〜も、失敗でした。経営として成り立たなかった。

ノーデ:残念だなぁ。ま、しかし、国内の政治も落ち着かないことだし。それどころじゃないのかもしれぬ。

ジャック:そもそもフランスはイギリスやオランダのように海洋国家じゃありませんからね。

ノーデ:島国イギリス、資源に乏しいだけに海運にかけるオランダは強い。

ジェック:相次いで東インド会社をつくって鎬を削っていますね。

ノーデ:フランスの港はどうも使い勝手が悪いようだ。

ジャック:そういや、フロンドの乱が始まるちょっと前まで日本でオランダ東インド会社の商館長だった人はフランス人だったそうですよ。

ノーデ:ああ、そうだ。フランソワ・カロンとかいったかな。

ジャック:そういう人をリクルートしてくればいいんじゃないでしょうか?

ノーデ:だが、カロンはオランダに亡命した新教徒の息子だぞ。

ジャック:イギリスとオランダに対抗するには、それくらいしないと。

ノーデ:いずれにしても、この政治的混乱がおさまらないことには、海運までは手が回らないのではないかな。

ブラウの地球儀(製作1645年 オランダ)ブールジュ_図書館所蔵 (撮影 マザリナード・プロジェクト)

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