マザランの不在 コンデ親王の勢力に押され気味の宮廷はポワティエへ移動?
どうやらこの秋はアンヌ王妃様の方が劣勢みたい⁈
ノーデ:10月も今日で終わりか…
本の行商人ジャック:早いもので、もう、今年もあと2ヶ月ですよ。
ノーデ:宮廷は今日からポワティエへ移動だ。
ジャック:コンデ親王は着々と西南フランスを手中に収めています。
ノーデ:王妃様の軍隊は兵士の数においてもコンデさんの軍隊に劣っている。
ジャック:なんだかじわじわとコンデさんの勢いに押されている感じがなきにしもあらず。
ノーデ:確かに。王妃様の方がどうも部が悪いようだね。
ジャック:そういえば、1ヶ月前にあったルイ14世の成年式にも、コンデさんは出席しなかったのでしたね。
ノーデ:成年式には大貴族の面々も、皆、参加して祝っていたから、コンデ親王の不在はことのほか目立っていたな。
ジャック:あのラ・ロシュフーコーさんもご出席でしたよね。フロンド派でコンデ親王にも近いのですが。
ノーデ:基本的にそれが大貴族の本分だからだ。ルイ14世はまだ13歳。とはいえ、王は王だ。
ジャック:では、こんな状態で王妃様はどうすればいいのでしょうか?
ノーデ:マザラン枢機卿を呼び戻すしかない、のではあるまいか…やはり。
ジャック:それはちょっと、どうなのでしょう。フロンド派が反対するのは目に見えていますよ。コンデ派だって、黙っちゃいない。
ノーデ:そりゃ簡単にはいかないだろうさ。でも、王妃様には他にどんな手があるだろう。
ジャック:パリに残っているオルレアンはそれほど頼りになるとは思えませんしね。
ノーデ:マザラン枢機卿としても、一刻も早く傭兵を連れてフランスに戻り、王妃様に加勢したいところではないかな。時期の問題だが…
ジャック:なんだかポワティエへの移動は王妃様側の形勢不利を可視化しているような気がするんですよねぇ。王様が成年に達せられたというのに…
古の都ポワティエ
ノーデ:そう悲観することもないのだぞ、ジャックよ。まあ、フランスの宮廷は昔から一ヶ所にとどまらず、転々と居を移していたから。
ジャック:確かに…ロワールのお城めぐりを後世の人が楽しめるのも、そのおかげ…いや、そういうことじゃなくて。
ノーデ:ポワティエは古い都だ。フランク王国の時代からあった。
ジャック:ウマイヤ朝の西ヨーロッパ侵攻を止めた戦いもこの地であったのでしたね。
ノーデ:百年戦争で英国のエドワード黒太子にフランスが完敗したのもここ。
ジャック:あぁぁぁ、1356年の9月19日の戦い!フランスの王様が捕虜にされたやつだ。
ノーデ:あれはまったくの黒歴史だよ。我が軍の方が数では優っていたのだからね。
ジャック:エドワード黒太子の捕虜になったのはジャン2世でしたっけ?
ノーデ:身代金を要求され、一旦は解放されたが、しかし、結局、また自らロンドンに戻らざるをえないことになり…
ジャック:そこでお亡くなりになった…。まことにお気の毒な王様でした。
ノーデ:あの頃の英国は勢いがあったからな。
ジャック:だけど、エドワード黒太子の方だって、最後は幸福とは言えませんでしたよ。病魔に祟られて。45歳で亡くなった。
ノーデ:奢れる者久しからず、ただ春の夜の夢の如し…だなぁ。
ジャック:戦場での快進撃、だが、その陰で財政難を引き起こし、
ノーデ:そして最後は疫病。
ジャック:いかに英雄といえども、病には勝てなかった。
ノーデ:このように戦場となった歴史の他にも、ポワティエには中世にまで遡るヨーロッパで最も古い大学のひとつがある。
ジャック: 人は消え、時の彼方へ去っていく。
ノーデ:けれど、学問の営みだけは残る…

