1650年2月2日−2月8日

父の死によりラ・ロシュフーコーさんは新公爵に

ノーデ:ラ・ロシュフーコー公爵の父上が亡くなられ(2月8日)、マルシアック公子と呼ばれていた6世が公爵位を継ぐことになった。

本の行商人ジャック:これからは晴れてフランソワ(6世)・ド・ラ・ロシュフーコー公爵を名乗れるわけですね。

ノーデ:宮廷から公式に許可されて、爵位相続の誓詞が高等法院に登録されるなど手続きが必要だがね。

ジャック:あ〜そこにも王様の権威が関わってくるんだ!

ノーデ:それでなければ、君主なんて、意味ないじゃん?

ジャック:ノーデ先生、お言葉づかいが乱れておりますよ。

ノーデ:SNSの悪い影響だな。

ジャック:しかし、この襲名というか、相続のために、ロングヴィル公爵夫人の愛人でもあり、フロンドの乱随一の武闘派、ラ・ロシュフーコーさんが戦線離脱?

ノーデ:とりあえずは葬儀のために国元へ戻るらしいが…じつはラ・ロシュフーコー新公爵にも大逆罪で宮廷から出頭命令が出ているようだ。

ジャック:もしやいったん引いて、態勢の立て直しとか?

ノーデ:葬儀を名目にして、蜂起のための貴族を集めることも可能だからな…

ジャック:国王陛下とアンヌ様は無事にルーアンに到着。大歓迎されている模様です。

ノーデ:あちらにはマザラン枢機卿も追ってご到着するだろう。まだ11歳のルイ14世にとっては、また落ち着かない日々がはじまるのだのう。

ラ・ロシュフーコー城にあるフランソワ(6世)・ド・ラ・ロシュフーコーの肖像

悪役を押し付けられたコンデ親王?

ジャック:さて、先週に引き続き、今回の逮捕劇の背景ですが、コンデさん側にはどんな事情が?

ノーデ:まず、昨年のちょうど今頃、宮廷がサン=ジェルマン=アン=レーに移っていて、パリは2月8日には完全にコンデ親王率いる国王軍に包囲されていました。

ジャック:そこからの兵糧攻めで、ラ・ロシュフーコーさんらが戦火をくぐり、危険を冒してパリへの生活物資調達に走っていましたね。

ノーデ:飢え死に寸前に置かれたパリ市民は、今もコンデさんには恨み骨髄。

ジャック:しかし、宮廷にとっては、このパリ包囲が功を奏して、高等法院が膝を屈することになったのですから、コンデさんは頼もしい味方、救いの神ですよね?

ノーデ:そうは簡単にいかないのが、世の常なのだよ、ジャック。

ジャック:問題は和平が成立したあとですか?

ノーデ:まさしく。コンデ親王は王妃様に忠誠をつくした。その見返りが…

ジャック:市民から向けられる憎悪。

ノーデ:しかも、王妃様からは丁寧に敬意をもって遇されども、実質的な見返りはない。他の人と比べても、冷遇されているようにすら感じられる。

ジャック:悪役に徹すればよかったのに…

ノーデ:そういう性格ではないのね。育ちが良すぎるというか、なんというか…

ジャック:それで拗ねちゃったんですかね?

ノーデ:同じ王族であるルイ14世の叔父オルレアン公と比べられることもあった。

ジャック:あの方は戦火の拡大を心配してオロオロしていましたね。

ノーデ:それに対し、コンデさんにはいかにも好戦的なイメージがある。

ジャック:外国との戦争で数々の勝利をおさめ、幾度も凱旋している。

ノーデ:だが、すべては宮廷を守るためなのだ。しかし、まるでコンデさんひとりが事態を悪化させているような空気になってきた。

フロンド派がコンデ親王に急接近…敵味方が入れ替わる?

ジャック:昨年5月に、コンデさんが宮廷から一時身を引かれたのも、そういうヒリヒリした空気のなかでしたね。

ノーデ:和平成立で、貴族のあいだの縁組話も動き始め、そんななかでマザラン枢機卿の姪とメルクール公との縁談がもちあがった。

ジャック:コンデ親王がそれに強く反対して険悪な雰囲気になりましたね。

ノーデ:メルクールさんは、王様の庶子の系統とはいえヴァンドーム公の息子。フロンドの乱で暴れたボーフォール公とは兄弟。

ジャック:親父様のヴァンドーム公としては、この縁組でマザラン枢機卿に接近し、宮廷内に安定した地位を確保したいと目論んでいた。

ノーデ:このように宮廷でコンデ親王とマザラン枢機卿との間がギクシャクし始めると、動き出した人たちがいる。

ジャック:フロンド派がコンデさんに急接近してくるのですね!

ノーデ:だが、コンデさんにはマザラン枢機卿を宮廷から排除しようという考えはなかった。ただ、上下関係として、枢機卿は王族である自分の意見に従うべきだと思っていたのだ。

ジャック:反マザランのフロンド派の人たちは失望したでしょうね。

ノーデ:レ枢機卿など、そこで見切って、マザラン側についた方が得だと寝返っているよ。

ジャック:そしてついに、今年1月にコンデ親王を狙ったテロが起きたんですよ!

ノーデ:それはまた来週お話しましょう!

ジャック:ではまた、続きをお楽しみに!