パリにふたたびフロンドの風が吹く?
パリ高等法院周辺は不穏な空気に包まれる
ノーデ:オルレアン公、ムッシューは、とりあえずボルドーからの陳情を大人しくさせるためにエペルノン公爵の解任を約束したのだが、ボルドー問題はそれで治りそうな気配はない。
本の行商人ジャック:後任を誰にするのか、コンデ親王妃と幼い息子のアンギャン公の身の安全、ボルドー全体の治安の回復、大貴族擁護派が要求している全員の免罪と本来の職務への復帰など、このあとも詰めなければならないことが山積み。まぁ、紛糾しますわねぇ。
ノーデ:エペルノン公爵解任いらい、パリ高等法院ではずっと討議が続いている。
ジャック:しかし、どうも流れとしては、諸悪の根源マザラン枢機卿を排除しろという意見に傾いているようにみえるのですよねぇ。
ノーデ:そしてオルレアン公に仲裁役を求める声もある。
ジャック:だいたい、こういう時には、議論の最中にとんでもなく変なことを言い出す人もいたりするのですよ。
ノーデ:そればかりではないぞ、ジャック。司法宮の外では、コンデ派の使用人が集まって「マザランはいらん!」と叫んでいる。
ジャック:そいつはフロンド派にそそのかされたのでしょう。
ノーデ:司法宮を出ようとしたムッシューはそう叫ぶ人たちに押されて、気分を悪くした。なんとその声はボーフォール公までも、マザラン派と非難しているのだよ。
ジャック:まぁ、それはヴァンドーム家がご長男とマザラン枢機卿の姪との縁談を受け入れたからでしょう。親父さんも、それを足がかりにして、宮廷内における地位を優位にしようとしていることだし。
コンデ派には有利な風向き?
ジャック:なんとなく風向きが、コンデ派には追い風になっているような気がするのですよ。
ノーデ:プランセス・パラティーヌとシュヴルーズ公爵夫人による解放運動も影響を与えてきているようだ。(1650年3月2日−3月8日)
ジャック:とはいえ、釈放にはまだ遠いのですけれどね。
ノーデ:ゴンディ協働司教も釈放には猛反対で、ムッシューもそれは論外だと考えている。
ジャック:それは当然といえば当然ですよね。だって、ゴンディ協働司教にとって、コンデ親王は天敵ですから。
ノーデ:ムッシューもコンデ親王が自由になれば、自分の存在感が薄れることになろうし。
ジャック:だけれど、ボルドーの変を鎮めたいなら、もっとも手っ取り早い方法は、コンデ親王らを解放することでしょう?
ノーデ:パリ高等法院の議論でも、反マザラン派はそう主張している。
ジャック:王妃様とマザラン枢機卿がご不在になってから、どうもパリ高等法院はボルドーに同情的みたいですしね。
ノーデ:ムッシューも舵取りに苦労しているようだ。
ボルドー情勢
ジャック:パリで起きていることは逐一リブルヌの王様に報告されています。
ノーデ:ところで、今、リブルヌの陣で王様を取り巻いているのは、フランスでもっとも美しい軍隊なのだよ、ジャック。
ジャック:君主がそこにいるというだけでも、反逆者たちには嫌なものでしょう。
ノーデ:それだけではない。ぴかぴかの武器、そろいのお仕着せを着た兵士たち、立派な指揮官たち。どれもが視覚的に威圧するだけでなく、見るものに自分たちは間違ったことをしているのではないかと感じさせるのだ。
ジャック:ボルドーの人たちは遠いパリで起きていることは知りませんし、なかなかいい返事も助けも得られないでいる…希望も失われる…そこへ、王様。
ノーデ:ボルドーはこの王様の姿を見ているうちに態度を改め、王妃様に使者を送る。そして服従をしめし、慈悲を乞う。王が現前することで人々が心情を変える、王妃様はその効果をよく知っているのだ。
