コンデ親王ら三人の大貴族、宮廷と入れ替わりにル・アーヴルへ移送
災厄はできるだけパリから引き離すが吉?
ジャック:ノーデ先生、コンデ親王たちはル・アーヴルへ移送されたようです。
ノーデ:ああ、宮廷がパリに戻るのと入れ替わりに出発だったようだな。とりあえず、できるだけパリから離して、厳重な警戒ができるところへというわけだろう。
ジャック:ル・アーヴルってのは、どんなところなんで?
ノーデ:大西洋に面した港町だよ。映画『ル・アーヴルの靴磨き』(2011年)の舞台になったところだよ。アキ・カウリスマキ監督の。
ジャック:それは現代の話ですよね。
ノーデ:アフリカから密航してきた少年を、細々と靴磨きで生計を立てている男とその妻が匿うという話だ。
ジャック:私が知りたいのは、1650年、17世紀のル・アーヴルですよ!
ノーデ:今は当時の面影はいっさい残っていない。
ジャック:サロンのコンデ親王推しプレシューズさんたちもル・アーヴルまでは追いかけていかなかったのでしょうか?
ノーデ:それはどうかわからんな。むしろヴァンセンヌ城の親王らの独房だったところは、ひっきりなしに人が訪ねてきているようだ。
ジャック:女性たちが「コンデ親王の植えたカーネーションの鉢を手に取り涙ぐむ」って、なんなんですかね?
ノーデ:それは私でなく、スキュデリー嬢にきいてくれ。
さて、このままいくと政局はどう展開する?
ジャック:しかし、これでまた、コンデ親王らを釈放せよという声が高まりますよね。
ノーデ:なるだろうな。
ジャック:それは裏を返すと、マザラン枢機卿への批判が高まるということですよ。
ノーデ:このところ、マザラン枢機卿は旗色が悪い。
ジャック:いったいどうなってしまうのでしょう?
ノーデ:ここはやはり、ムッシュー、ガストン・ドルレアンがどう動くかにかかっている。
ジャック:ムッシューが動くと?
ノーデ:パリ高等法院のフロンド派とコンデ親王を支持する貴族らがさかんに働きかけているようだから。
ジャック:ムッシューが反マザランに、つまりフロンド派になると?
ノーデ:もともと仲が良いわけではないからな、ムッシューと枢機卿は。
ジャック:そうなると王妃様は…
ノーデ:マザラン枢機卿を宮廷から排除するように迫られるだろう。
ジャック:コンデ親王ら3人の大貴族の釈放も、当然求められますよね?
ノーデ:王様はまだ成年に達していない。宰相が失脚するか亡命することにでもなれば、王国はフロンド派の天下だな。
ジャック:ルイ14世が成年に達するのは、来年、1651年の9月の誕生日ですよ。
ノーデ:まだあと1年近くあるのだよ。

