1650年12月1日―12月7日

早すぎる死と皆が噂する

本の行商人ジャック:ノーデ先生、たいへんです。

ノーデ:どうした、ジャック、そんなにあわてて?

ジャック:コンデ家の大奥様がお亡くなりになりました!

ノーデ:あぁ、やはり…。

ジャック:お子たちの釈放と赦免を待ち望んでおられました。

ノーデ:ほんにな。そのお子たち、コンデ親王、コンティ公、ロングヴィル公爵夫人は皆、遠くにいて母を看取ることができない状態にあった。

ジャック:皆さん、早すぎる死であると同情しています。

ノーデ:やはり、一連の出来事が寿命を縮めてしまったのだろう。

ジャック:たいへん気位が高くていらっしゃるがゆえに、敵に対しては容赦できない。その憎しみに燃やし尽くされたというか…なんともお気の毒でなりません。

王妃様へのメッセージ

ノーデ:じつは病床から王妃様にメッセージを送られたようだ。

ジャック:それで、なんと…

ノーデ:自分と自分の子供たちの見舞われた不幸が王妃様に由来するものであろうと、自分はあなたにおつかえする身であると。そして、イエス・キリストの血にかけて、わたしの死をわずかでもお心にとめて、考えていただきたいと。

ジャック:泣ける…

ノーデ:王妃様はこのメッセージを、ひとりのキリスト教徒として死にゆく人の言葉として真摯に受け取られた。だがな、ジャック、じつは王妃様のご病気もよろしくないのだよ。

ジャック:なんと、伏せっておいでですか?

ノーデ:使者としてこの言葉を伝えに来たサンスの大司教に、王妃様もまた病床から言葉少なにお答えになったそうだ。だが、近くにいた人によると、その目には深い憂いが読み取れたそうだよ。

ジャック:なんともつらい…

ノーデ:王妃様は決して、この母のことを軽々に考えていたわけではあるまい。

ジャック:なんというか、まるで運命に翻弄されるふたりの母を見るようですね。

人の死を悼むより利用するのが政治…

ノーデ:とはいえ、この母の死も、これ幸いと思う人たちがいるのだ。

ジャック:いったい、誰です?

ノーデ:ムッシューの2度目の妻や、マドモワゼルつまりムッシューの娘さんたちだよ。

ジャック:どうして、また。

ノーデ:このおふたりは反マザランで、コンデ親王の釈放を望んでいた。しかし、コンデ母が目を光らせていたので、勝手な行動は慎まねばならなかった。しかし、もうその気遣いがいらない。

ジャック:軽率なことをしそうなおふたりではありますがね。

ノーデ:さて、コンデ家母がみまかられた今、コンデ親王夫人がしっかりと一家を背負っていかねばならぬ。

ジャック:さしあたり、パリ高等法院を動かすことを考えねば、ですよね!

Portrait de Charlotte Marguerite de Montmorency (1594-1650), épouse de Henri II de Bourbon-Condé (1588-1646) ルーベンスによるコンデ親王母の肖像

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