新春特別企画 ノーデの部屋 ゲストはラ・ロシュフーコー公爵
ノーデ:新年、あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。さて、新春特別企画としまして、週刊・フロンド日めくりではラ・ロシュフーコー公爵をお招きしての対談となります。
本の行商人ジャック:読者の皆さまにはすでにおなじみのラ・ロシュフーコー公爵ですね。
ノーデ:1650年に再燃するフロンドの乱後半でも、大活躍のラ・ロシュフーコーさん。
ジャック:昨年、フロンド暦3年のボルドーの乱では、ブイヨン公爵とともにマザラン枢機卿を困らせたことは記憶に新しいところです。
ノーデ:マザラン枢機卿は反乱をかろうじて抑えることに成功したとはいえ、譲歩に譲歩を重ねざるを得ず。
ジャック:ちょっと押され気味でしたね。
ノーデ:パリ高等法院のフロンド派はまたぞろ力を盛り返しつつある。
ジャック:あ、ラ・ロシュフーコーさんがお見えですよ。
ノーデ:どうぞ、こちらへ。
城館を破壊されたラ・ロシュフーコー公爵は語る
ラ・ロシュフーコー:本日はお招きありがとう。
ノーデ:昨年のボルドーの乱のあとは、どうなさっていらしたのですか?
ラ・ロシュフーコー:どうもこうも、君、叛逆罪でのおとがめはなしだったけれど、国王の軍隊によって、わが城館は徹底して破壊されてしまったのだよ。クソが…
ノーデ:では、目下、その再建にお忙しくされているのですか?
ラ・ロシュフーコー:やってくれるよなぁ…。まぁ、形あるものは、いずれ失われる運命とこころえておるがの。ちょっとショック…
ジャック:一方、マザラン枢機卿は、昨年12月に北でスペイン軍を打ち負かし、意気揚々とパリにお戻りになっておりますが。
ラ・ロシュフーコー:ああ、枢機卿はご機嫌のようだな。だが、ノートルダム大聖堂で戦勝祝いのミサをするにあたって、戦利品をずらっーと並べて見せたのはまずかった。
ノーデ:どうしてでございますか?
ラ・ロシュフーコー:マザラン枢機卿のドヤ顔なんぞ、1秒だって見たくないという人たちがたくさんいるのだ。そういう人たちの気持ちをみごとに逆撫でした。わざとやったのかね、枢機卿は?
ジャック:たーしかに、あれではまるで枢機卿が力を誇示しているように見えました。
ラ・ロシュフーコー:フロンド派は、マザランが独占的に権力を手中におさめることを心底恐れているのだ。
ジャック:宮廷の方々も似たりよったりなのでは?
ラ・ロシュフーコー:もちろんさ。皆、それぞれ腹に一物、手に荷物。だが異なる思惑を抱えながらも、反マザランでは一致する。
ジャック:枢機卿を王権から遠ざけたいと。
ラ・ロシュフーコー:そればかりじゃないぞ。財産も奪えるだけ奪い、身ぐるみはがしてやろうと目論むものもいる。
ジャック:おそるべし…人間の強欲さ!
ノーデ:あの、マザラン枢機卿の図書館のために、私が集めている蔵書類も狙われているのでしょうか?
ラ・ロシュフーコー:ああ、そのとおり。蔵書類はパリ高等法院の法官たちが虎視眈々と狙っている。競売にかけられることになったら、涎をたらして、まっさきに飛びつくことだろう。
ジャック:ああ、それって、ノーデ先生が枢機卿のために選び抜いた蔵書ぉ〜!
ノーデ:お忘れかもしれませんが、私、マザラン枢機卿の図書館の司書をつとめさせていただいております。なんとか蔵書を散らさないようにする方法はないものでしょうか?
ラ・ロシュフーコー:あの禿鷹のような法官たちの書籍蒐集欲を逃れるのはむずかしいだろうな。
ノーデ:ぐぬぬ…
ジャック:それで、宮廷の面々は?
ラ・ロシュフーコー:自分が耳にしているだけでも、宮廷では、ルイ14世の叔父であるムッシュー、つまりガストン・ドルレアン、そして陰謀マニアのシュヴルーズ夫人、稀代の舌先三寸男ポール・ド・ゴンディ協働司教、のちのレ枢機卿、政治の中枢に返り咲きたいシャトーヌフさん、ヴァンドーム家の暴れん坊、市場の王こと、ボーフォール公爵あたりがなにかたくらんでるようだな。
ジャック:そういえば、ムッシューは3日に王宮へちょこっと顔をみせたそうですよ。
ラ・ロシュフーコー:ムッシューの動きはかなり重要だから。
ノーデ:4日にはマザラン枢機卿と長く話し込んでいらしたようす。でも、内容はわからない。
ジャック:枢機卿はうまくムッシューを懐柔できるでしょうかね?
ラ・ロシュフーコー:わからんな。地位も教養もあるのに、とかく人の意見に影響されやすいのが、ムッシューだ。たぶん、すでに誰かに何かを吹き込まれているにちがいない。
ジャック:ああ、それならゴンディ協働司教、のちのレ枢機卿だ。このところムッシューにべったりだっていうから。
ラ・ロシュフーコー:あいつはどうも虫が好かんのよね…。
ジャック:機会があったら、重たい扉で首をはさんでやろうか…なーんて、まさか考えてないでしょうね?
ラ・ロシュフーコー:今のところ、そういう機会には恵まれていない。
ジャック:ほーら、やっぱり。この先、そんな機会がないとは限りません。うんうん。
ノーデ:こらこら、ジャック、煽るものじゃない。
ジャック:おいらは可能性の問題を言ってるだけですよ、ノーデ先生。
(次週へつづきます)


