1651年3月15日―3月21日

インテリジェンス、情報収集・分析にまさる武器はない

本の行商人ジャック:今週も引き続き、マザラン枢機卿においでいただいております。

ノーデ:王妃様がおひとりでパリに取り残されることになり、心細い思いをなさっているのではないかというお話でしたね。しかし、枢機卿のお考えではそうでもないと?

マザラン枢機卿:フランスを離れるといっても、まったく連絡がとれなくなるわけではないのだよ。あまり大きな声ではいえないがね。なんなら、手紙だってちゃんと届くのさ。私の耳となって、なんでも知らせてくる部下を残してきてもいるし…。

ノーデ:いつの時代にも情報収集・分析にまさる武器はない、ということですね。

ジャック:たしかに枢機卿のスパイはどこにいでもいて、聞き耳を立てているという噂ですよ。

ノーデ:では、パリで起きていることはほとんどすべてお見通しというわけですね

ジャック:それと財力ですよ!枢機卿ほどの財力ならば、軍隊だって雇えるし、外から王国の政治を操るなんてお茶の子さいさい。

マザラン枢機卿:ジャックよ、その言い方は誤解を招く。それではまるで私が王国を乗っ取ろうとしてるようではないか。

ジャック:マザリナード文書を読む限りではそうですね。枢機卿がとんでもなくお金持ちだということは、まぎれもない事実ですから。おいらのような庶民からしたら、もう想像を絶する大金持ち。王様よりもお金持ちだって!

巷で叩かれる蓄財王マザラン

マザラン枢機卿:やれやれ…巷に溢れる反マザランのパンフレ(小冊子)、つまり、ジャックが売り歩いているような印刷物では、とりわけ私の財産がどんなふうに取り沙汰されているか、知らないわけではない。まるで私が強欲なケダモノのように描かれているのだからな。

ジャック:みんな、知っていますよ。徴税役人はぜーんぶ枢機卿の手下だって。

ノーデ:おやおや、ジャックはどうやら少しマザリナードを読みすぎたようだな。

ジャック:おいらはパンフレもいっしょにを売り歩く本の行商人なのでね、いやでも耳に入ってくるのですよ。

マザラン枢機卿:ジャック、たしかに私はお金持ちだがね、これは王国、いや、王様にお仕えするためのお金なのだよ。王様をお守りするために使うお金だ。

ジャック:ご自分が贅沢したいからではないと?

マザラン枢機卿:誓って。(小声で)まぁ、贅沢が嫌いとはいわんがね。

ジャック:ですよね。イタリアから劇団を呼んだり、賭け事したり、美味しいものをお腹いーっぱい召しあがっているそうだから。

マザラン枢機卿:…と、マザリナードには書かれているがね。

ノーデ:よいか、ジャック、この話はそこまでにしておきなさい。

マザラン枢機卿:いかんせん、この時代の国庫の扱いには、公私の境があいまいなところがあった。それは認める。

ノーデ:のちにニコラ・フーケさんがそれでたいへんことになりますね。フロンドの乱の当時は、たしかマザラン枢機卿の財務を担当。

マザラン枢機卿:ニコラ・フーケは私が亡命しているあいだも、その忠誠心は変わらず、財産管理から連絡役まで引き受けてくれている。あれは財務の才覚のある男だ。帰国したら、それなりの役職で報いてやらねばならぬと考えておるのよ。

ジャック:マザラン枢機卿の元でしっかりと蓄財のノウハウを学んでおられますからね。フーケさんは、いずれ枢機卿以上の資産家になるでしょうよ。そのせいで王様の嫉妬を買うかもしれませんね。

マザラン枢機卿:ともかく、私の全財産は王様を守るためにある。国外に亡命していても、摂政の王妃アンヌ様をお助けするのが役目。そこのところを忘れないでもらいたい。

フランス学士院にあるマザラン枢機卿の墓の彫刻 (撮影マザリナード・プロジェクト)

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