全国三部会の開催を求める貴族会議
1614年以来開かれていない全国三部会
本の行商人ジャック:やっぱり、コンティ公とシュヴルーズ夫人の娘さんの結婚は正式に破断になりましたね。
ノーデ:宮廷中が注目し、関係者一同すったもんだの末、ついにフロンド派とコンデ派の同盟はご破産ということだな。
ジャック:そういえば、先月、王妃様は全国三部会の開催を承認なさったそうです。
ノーデ:おお、そうだったな。
ジャック:ずいぶん久しぶりですよね。
ノーデ:最後に開かれたのは1614年。先王ルイ13世がまだ幼少の頃で、王母マリ・ド・メディシス様が摂政だった。
ジャック:こうしてみると、17世紀というのは、2人のルイが幼くして王位につき、それぞれの母親が摂政をつとめた時代でもあるのですね。
ノーデ:地方でマザリナード文書を集めた同時代人が、それらを装丁させて、背表紙に「ルイ13世とルイ14世の御世に出版された文書」と書き入れたのもわかる気がする。
ジャック:王様が幼いと、王の権威も弱くなり、世の中は不安定になりますね。
ノーデ:それこそ有象無象が出てきて権力を我がものにしようとするからな。
ジャック:強い王様が必要ってことでしょうか。
ノーデ:いや、しかし、王権は無制限に強ければいいというわけではない。どこかで制御しないと、専制君主が生まれ、結局、国が乱れるのだ。
ジャック:バランスを取るのが大事ということですね。
ノーデ:パリ高等法院は、今こそ、王国基本法に従って、法の番人である自分たちがその役目を担うのだという自負をもっている。
ジャック:王令もパリ高等法院に登録されなければ、ただの紙切れになるのですよね。
ノーデ:そこで、前半のフロンドでは、パリ高等法院が摂政の、というよりマザラン枢機卿の執政に否を突きつけたかたちになったな。
ジャック:しかし、王権を否定するわけではないのですね。
ノーデ:そこは押さえておかねばならないところだ。
ジャック:二年前にチャールズ1世の処刑を決めた英国議会とはそこがちがうのですね。
ノーデ:あの事件がパリ高等法院に大きなショックを与えたのは事実だがね。
全国三部会は開かれるのか…
ジャック:ところで、今回の全国三部会は、どういう経緯で開催されることになったのです?
ノーデ:貴族会議の要請が通ったのだ。
ジャック:貴族会議って、コンデ親王の釈放を求めるために集まっていたのではなかったですか?
ノーデ:御三方が解放された今、その意味ではもうお役目は済んでいるが、人は集まると、声が大きくなり、力が生まれる。
ジャック:貴族会議はこの政治的混乱を利用して自分たちも存在感を示そうと動き始めたのですか?
ノーデ:パリ高等法院を牛耳る新興勢力、すなわち法服貴族への対抗意識も否定できない。
ジャック:いずれにせよ、大義名分は王国の秩序回復ですね。
ノーデ:そういいつつ、じっさいには既得権益の維持に執着していたりするのだ。みんな自分がかわいいのさ。
ジャック:このところ、徐々に王様に権力が集中するようなかたちで制度が変わりつつあることも影響しているのでしょうかね。
ノーデ:フロンドの乱の背景にあるのは、単純に三十年戦争にかかった費用と税の問題だけではない。王権が強化され、国王が直接統治するための制度的移行で、それまでに享受してきた特権を失うのではという危機感がある。
ジャック:逆に、そうなると得をする人もいるはず…
ノーデ:先王ルイ13世の時代から、王権の強化をいささか強引に進めてきたリシュリュー枢機卿は方々から憎まれていた。マザラン枢機卿もその路線を引き継いでいる。反発を受けるのは当然といえば当然なのだ。
ジャック:王妃アンヌ様は、ルイ14世の成年を待って、秋に全国三部会を招集すると決められたようですが…
ノーデ:ほんとうに実現するかどうかは、そのときになってからでなければわからん。
ジャック:開かれないこともあると?
ノーデ:水晶玉を覗くと、どうもこの秋の全国三部会は映像がはっきりしないのだ。

