1651年5月3日―5月9日

王が成年すると何がかわる?

ノーデ:とにもかくにも、今年の9月に王様が満13歳になられるまでは、王妃様にはなんとかがんばっていただかなくては…

本の行商人ジャック:それにしても、なんですね…コンデ親王がお戻りになったのをよい機会に、王妃様から摂政の地位を奪ってしまえばよかったのですよね。フロンド派が声高に、外国人の王妃と外国人の宰相がフランスをダメにしていると騒いでいたのですから。

ノーデ:そこがそうはならないのが歴史。

ジャック:王様が成年になると、自動的に摂政は必要なくなるのだから、それまで放っておけということだったのでしょうか?

ノーデ:いやいや、ジャック、むしろ、王様が成年に達した場合、王権は強化される。王の権威を盾にしたほうが、王妃様は今よりも力を増すことができる。

ジャック:それじゃ、王妃様から力を奪うには今がチャンスってことじゃないですか?

ノーデ:だから、そうはならないのが、現実なんだってばさ。

ジャック:ところで、13歳になったからといって、そんな歳で王国が統治できるはすもないですよね。いったい誰がこの年齢に決めたのですか?

ノーデ:今を去ること数百年前、シャルル5世がそう決めたのだよ。

ジャック:古!ヴァロワ朝のフランスの王様ですよ。

ノーデ:まぁ、300年前のことだ。

ジャック:ひぃ〜!

ノーデ:以前はもう少し年長になってからだったのを下げたということだから、当時もいろいろ事情があったということだろう。少なくとも、王様が成年をむかえられれば、もう摂政顧問会議も必要なくなる。

ジャック:その意味では王妃様の意向がストレートに反映される可能性が強まるってことですよね。オルレアン公やコンデ親王にお伺いを立てなくてもいいってことですか?

ガストン・ドルレアン対ルイ・ド・ブルボン=コンデ?

ノーデ:さて、そのオルレアン公だが…

ジャック:マザラン枢機卿の亡命と同時に、コンデ親王、コンティ公、ロングヴィル公爵が幽閉から解放されたときに、ムッシューすなわりオルレアン公はいそいそとお出迎えされていましたよね。

ノーデ:ふむ。ひっつき虫のゴンディ協働司教、のちのレ枢機卿をしたがえてな。

ジャック:あれは、自分たちこそが、あなた方の解放の功労者だと印象づけたかったのでしょう?

ノーデ:だが、それには失敗したようだぞ。

ジャック:コンデ親王とその周辺にしてみれば、解放されて当然ですからね。誰かに恩に着るなんて考えてもみないでしょう。

ノーデ:しかも、このところ、王妃様はのコンデ親王ばかりを贔屓しているようにみえる。

ジャック:本心はどこにあるのか、わかりませんが、コンデ親王の希望どおりに役職などを与えられておられますね。

ノーデ:マザラン枢機卿が亡命した直後には、王妃様に代わって摂政になってくれと、フロンド派からムッシューへのプッシュは強かったのだがね。

ジャック:なんでそこで決断しないのか…って、ご性格ですかね。

ノーデ:フロンド派はマザラン追い落としのために、コンデ派と協調していたが、もはやその必要はない。

ジャック:たしかに…フロンド派がコンデ親王らの解放を求めることに熱心だったのは、マザラン枢機卿を倒すのが目的だったからですよね。

ノーデ:その目的は達成されたのだよ。

ジャック:それじゃもう仲良くする理由はないですね。

ノーデ:この状況で、コンデ親王の方ばかりが厚遇されれば…。

ジャック:その他の人たちは不満を募らせるでしょうね。

ノーデ:マザラン枢機卿打倒で結束していた人たちのあいだに亀裂がはいるかもしれない。

ジャック:王妃様はそこまで考えておられるのでしょうか?

ノーデ:しかし、王妃様でないとしたら、誰かがそのシナリオを書いていたとしても不思議ではない。

ジャック:ノーデ先生、まさかブリュールに亡命中のあの方が…。

ノーデ:マザラン枢機卿から王妃様いは定期的に連絡が入っているのだよ。

Louis XIV en costume de sacre, en 1648.