1651年5月10日―5月16日

コンデ親王、ギュイエンヌ地方総督に任命される

本の行商人ジャック:ノーデ先生、巷では、ブリュール亡命中にもかかわらず、マザラン枢機卿が王妃様を操っているという噂です。

ノーデ:不満はすべてマザラン枢機卿にむかうのだよ。

ジャック:今週、コンデ親王が正式にギュイエンヌの地方総督に任命されましたが、そこにも枢機卿の意図が働いていると勘繰る人がいます。

ノーデ:皆、疑心暗鬼だな。

ジャック:それにコンデ派の面々に与えると約束された役職も、同様にすべて公式に認められましたからね、ムッシュー、すなわちオルレアン公のリアクションが気になります。

ノーデ:ひとことの相談もなく決められたと、当然のようにご不満だよ。

ジャック:そうでしょう、そうでしょう。

ノーデ:腰巾着のゴンディ協働司教なんかは、ムッシュー以上に大ブーイングさ。

ジャック:さもありなん。

ノーデ:だが、ゴンディさんご本人よりも、彼を取りまくフロンド派の女性たちの方が「これはスキャンダルだ!」と騒いでいる。

ジャック:ゴンディ協働司教は人を煽りたてるのが得意ですからね。

ノーデ:教会の説教で鍛えているからな。

ジャック:もし、ノーデ先生がマザラン枢機卿だったら、この状況をどう利用しますか?

ノーデ:この機会にフロンド派とコンデ派が完全に離反してくれると嬉しいかな。

ジャック:ふむ、そのためにはどうしますか?

ノーデ:王妃様を通じてコンデ派に厚遇を与え、まず油断させるだろう。

ジャック:ご褒美の地位なんて、あとでいくらでも取りあげられますからね。

ノーデ:そうだ。それで安心しきって、マザラン枢機卿はもう戻ってこないものと考え、コンデ派はいよいよ傍若無人にふるまうことだろう。

褒美という名の毒饅頭

ジャック:だが、それでコンデ派は周囲の反感を買う。

ノーデ:敵は孤立させるのが一番なのだ。

ジャック:ムッシューを担いでいるフロンド派は黙っていないのではないでしょうか。

ノーデ:だから、ゴンディ協働司教がフロンド派の女性たちを煽るのさ。

ジャック:ムッシューはコンデ親王を以前からうっとうしく思っていますよ。

ノーデ:だが、あの人は表立って反コンデの旗振り役にはならないだろう。

ジャック:面とむかってコンデ親王と対立するようなことは避けたいと?

ノーデ:だから、ゴンディ協働司教の出番なのさ。

ジャック:ふむ、すると彼を利用するのですか?

ノーデ:ゴンディ協働司教なら、餌をちらつかせれば、かならず飛びついてくるだろう。

ジャック:完全に性格を見透かされていますね。

ノーデ:枢機卿の帽子が…といえば、こちらに寝返るのは確実だ。

ジャック:いったい、どんな手を使って、ゴンディ協働司教を引き入れるのです?

ノーデ:まぁ、見ていなさい。

マザラン胸像(パリ・マザラン図書館)