1651年5月31日―6月6日

高位聖職者にて舌先三寸男、ポール・ド・ゴンディのちのレ枢機卿を感涙させたマザラン枢機卿の手紙とは…

本の行商人ジャック:ノーデ先生、聞きましたか?

ノーデ:なんだ、何があった?

ジャック:ゴンディ協働司教が夜ふけに王妃様に呼ばれたそうなのです。

ノーデ:なんだって?

ジャック:噂では、王妃様はマザラン枢機卿から送られてきた手紙をゴンディ協働司教に読み聴かせたのだそうです。

ノーデ:なんでまたそんなことを?

ジャック:どうやら、その手紙というのが、そもそもゴンディ協働司教に聴かせる目的で書かれていたらしいのです。

ノーデ:ほう…

ジャック:なんと、それを聴きつつゴンディさんは涙を流したのですと。

ノーデ:なんだ、なんだ、それはどういう涙なのだ?

ジャック:感激してしたようだと。

ノーデ:ジャックはどこからその情報を?

ジャック:王妃様に近い方々が話していたのですよ。

ノーデ:ふむ…わざわざ、ゴンディ協働司教に聴かせるように書かれた手紙とな…

ジャック:あやしいでしょう。これ、匂いますよね。

ノーデ:しかも、あの舌先三寸男を嬉しがらせ涙させるような手紙…

ジャック:そうです。これは絶対にマザラン枢機卿が何かを約束したにちがいありません。

ノーデ:ゴンディ協働司教を味方につけようという意図は感じられるな。

ジャック:でしょう?枢機卿はなにを企んでいるのでしょうね?

ノーデ:なにやら企んでいるのは確かだ。

ジャック:宮廷には枢機卿の目と耳が張りめぐらされていますからね。

コンデ親王のカリスマ性に影が差し始めた

ノーデ:ところで、先週話題に出た、コンデ親王の動向なのだが…

ジャック:ああ、再軍備をすすめているらしいという。

ノーデ:どうも、コンデ親王自身のカリスマ性に、近頃、翳りが出ているようだ。

ジャック:三十年戦争をフランスに有利に終結させる数々の戦勝をもたらした英雄、そしてこの度はマザラン枢機卿により不当に1年間も身柄を拘束され、解放されたときは、まるで凱旋将軍のようにパリ市民に迎えられたのに?

ノーデ:もともと、コンデ親王は人から愛されるキャラではない。それはたしか…

ジャック:まぁ、2年前にはパリを包囲して市民を餓死させそうになったのですものね。

ノーデ:だいたい、気位が甲冑を着て歩っているようなお方なのだ。ボーフォール公が「市場の王」と呼ばれ、庶民に大人気なのと反対に、どっからどう見ても親しみがもてない。

ジャック:しかも、再軍備しているという噂もありますからね。なんかこう、怖いですよね。

ノーデ:それに、このところ宮廷との間も、ギクシャクしている。どうもコンデ親王の周囲に与えるとされていた特権を、王妃様はとりあげようとなさっているらしいぞ。

ジャック:そんなときに、ゴンディ協働司教が涙するような嬉しいことをマザラン枢機卿が言ったとすると…

ノーデ:敵は本能寺にありというシグナルかもしれないな。

ジャック:ノーデ先生、この場合は、ここはフランスですから、仏教のお寺じゃなくて、別のところの例えはないのですかね?

ノーデ:ごめん、今、思いつかないのよ…

レ枢機卿の肖像
ポール・ド・ゴンディのちのレ枢機卿

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