見捨てられるコンデ親王?
政治に裏切りはつきもの
本の行商人ジャック:ノーデ先生、コンデ親王は身辺の危険を感じておられるようです。
ノーデ:またもや身柄を拘束されるなんて、まっぴらごめん…と思っておられるにちがいない。あの気位の高い御仁にとっては屈辱だろうからね。
ジャック:しかし、去年、逮捕された時には、近しい大貴族だけでなく、貴族会議の人たちも味方になって解放のために尽力してくれたではありませんか。
ノーデ:それはあれがマザラン枢機卿による不当逮捕だという問題意識があったからよ。じっさい、あの逮捕には同情すべきところがあった。日頃、コンデ親王をよく思っていなかった人でも、放っておけないと行動せざるを得なかったのだ。
ジャック:なるほど、コンデ親王擁護には大義があったのですね。
ノーデ:ああ。だが、あの時だって、周囲がすべてが味方になってくれたわけではない。味方と見せかけながら、ボルドーの反乱の直前に手のひらを返しをした人もいる。
ジャック:ああ、日和見サン=シモン公!あてにしていたのに、戦闘に参加しなかった。摂政の王妃様につくか、コンデ親王につくか、将来の損得を計算して態度を決めたのでしょうね。
ノーデ: サン=シモン公ばかりじゃない。コンデ親王が解放されたあとに、距離を置くようになった貴族もいる。
離れていく元帥や大貴族
ジャック:それにルテルやボルドーでコンデ派につき、国王軍と戦った大貴族や元帥も一部離れていってしまいましたね。
ノーデ:たとえば、あのときコンデ派の立役者だったテュレンヌ元帥がどちらにつくか。それによっては、けっこう大きな力の差を生む。王妃様はそのことを知っている。だからなんとしても元帥を獲得したい。しかし、コンデ親王はそこまで考えてはいないようすで、解放後の論功行賞を見ても、まるで彼らのことは忘れたかのようだった。
ジャック:それじゃ、テュレンヌ元帥と兄のブイヨン公爵はご不満でしょうなぁ。
ノーデ:あのときコンデ親王を助ければ、王様に取り上げられていた自治領であるスダンを取り返してもらえると考えていたのだろうが、そうはならなかった。
ジャック:え、それじゃ、もし、摂政の王妃様が「国王の名において、それを返してしんぜよう」と耳打ちすれば…
ノーデ:かならず話にのってくるだろう。そうなれば、力のバランスは大きく変わる。
ジャック:するとこの内乱、近々政治的潮目も大きく変わるかもしれませんね。
ノーデ:王妃様はただ感情的にコンデ親王を脅威だと認識しているわけではない。危険な敵であるがゆえに、よく見てもいるのだよ。
ジャック:ムッシューに関してもそうですかね?
ノーデ:残念だが、この2人は王妃様を見くびっている。王妃様はこの2人のライバル関係を上手に利用し、そこにゴンディ協働司教という策に溺れる策士を毒薬として投入した。それによって、さらに両者の間の嫉妬や憎悪を煽るおつもりなのだろう。
ジャック:母は強し…というか、いや、おそるべき権謀術数の使い手だったのですね、王妃様は。
ノーデ:まぁ、長年、マザラン枢機卿と宮廷政治を学んでいれば、これくらいは造作ないことだろう。
ジャック:さあ、この状況で、コンデ親王がどう動くかだな。

