1651年8月2日―8月8日

警戒感を強めるコンデ親王

本の行商人ジャック:いよいよ8月ですね、ノーデ先生。

ノーデ:フロンドの乱においては政治的にも熱い季節よ。

ジャック:なんと今週はコンデ親王が国王顧問会議に出席なさったそうじゃないですか?

ノーデ:ムッシュー、すなわちオルレアン公の警護につかないかぎり、会議には出ないと宣言いなさっておいでだった。

ジャック:で、ムッシューとともに出向いたと。

ノーデ:相当に強い警戒感をいだいておられる。

ジャック:宮廷には今でもマザラン枢機卿の支配がおよんでいると、コンデ親王は思っているようです。

ノーデ:それは、ある意味、正しい。王妃様と枢機卿は絶えず連絡を取り合っているからな。

ジャック:そこで、コンデ親王は、前回のように突然の拘束からのヴァンセンヌ城幽閉がふたたび起こるのではと恐れていらっしゃるのですね。

ノーデ:前回は王妃様の呼び出しに応じて宮殿にあがったら、弟のコンティ公、姉君の夫ロングヴィル公爵ともども、あれよあれよと言う間に逮捕されたのだ。

ジャック:ロングヴィル公爵夫人は、口を酸っぱくして宮殿に行ったら危ないと警告していたにもかかわらず。

ノーデ:今度捕まったら、どんなところに押し込められるかわからんからな。そりゃ、警戒して当然さ。

アンヌ王妃はコンデ追い落としの密約を結んでいるのか…

ジャック:それに噂では、摂政であるアンヌ様がコンデ派潰しのため、反対勢力と密約を結んでいるということですよ。

ノーデ:フランスの歴史を振り返ると、身柄の拘束で済めばいいが…最悪の場合、暗殺されないともかぎらない。そんな噂が出るようでは、コンデ親王の警戒も大げさとはいえないな。

ジャック:それで、コンデ親王が出席した此度の国王顧問会議はどうなったんですか? どこからどう見ても不穏だな。

ノーデ:雰囲気は最悪だったようだ。

ジャック:そりゃ楽しい雰囲気にはならないでしょう。

ノーデ:会議は短時間で終わった。

ジャック:とりあえずは無事に…。

ノーデ:コンデ親王はパリ高等法院と民衆に対して、自らの正しさをあらゆる手段で訴えかけようとしている。

ジャック:だけど、どう見ても、コンデ親王が挙兵できるほどの大義名分はありませんよ。

ノーデ:王妃様のなさりようやマザラン枢機卿の影の支配を非難なさっておられるが…。

ジャック:それがかえって高等法院の反感を買っているようなのですよ。

ノーデ: だいたい、一族郎党引き連れてサン=モールからパリへ戻って来るなど、いかにも宮廷に対して自分の力を誇示しているようにしか見えんからの。

ジャック:いや〜、でも、それがコンデ親王のスタイルというか、パリに戻る時はつねに凱旋将軍のモードです。

ノーデ:だが、それは中身がともなっていればの話だ。

ジャック:どういう意味です?

ノーデ:どうやらテュレンヌ元帥とブイヨン公爵の兄弟がコンデ親王から距離を置き始めているらしいぞ。

ジャック:あの最強の兄弟が⁉︎

Robert Nanteuil (1623-1678). “Mazarin”. Gravure, 1659. Paris, musée Carnavalet.

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