ポートレートを刷新した本の行商人ジャックが語る 17世紀フランスの印刷・出版業界(3)プチ日本ブーム?
ポートレートを刷新した本の行商人ジャックが語る(3)
ついに反コンデの国王宣言
本の行商人ジャック:ノーデ先生、宮廷は今、ブールジュに移動していますが、ついに反コンデの国王宣言が出ましたよ!
ノーデ:ブールジュといえば、コンデ家ゆかりの土地。
ジャック:あまり追い詰めるとコンデ親王が強烈な一手を打ってくるかもしれませんよ。
ノーデ:何か掴んでいるのか、ジャック?
ジャック:だって、これまでも、フランスの貴族は追い詰められると敵国スペインとも平気で組んだりしているじゃありませんか。コンデさんだって、そうしないとは限らない。
ノーデ:スペインは虎視眈々とフランス王家の弱体化を狙っているからな。
ジャック:ところで、先週話題に出たテオフラスト・ルノドさんも元々は新教徒だったのですよね。
ノーデ:今は改宗して、国王付きの印刷業者となっているがね。
ジャック:王国の人口における新教徒の絶対数は少ないのですが、国王のそばにもいたりするのですね。
ノーデ:そのあたりを論じると、1000ページでは足りないかもしれぬ。
ジャック:では、手短に。フロンドの乱というコンテクストに絞ってお願いします。
ノーデ:実は、フランスの大貴族の中にも新教徒はいる。そしてかつては新教徒だったという貴族もいる。端的に言ってしまうと、全てではないので誤解しないでもらいたいが、領主の政治的な選択という場合もあるのだ。
ジャック:遠い東の辺境の国、日本でも、似たような選択が見られましたよ。
ノーデ:大名とかいうご領主様が率先してキリスト教徒になったというアレかね?
ジャック:日本の場合はカトリックですが。彼の地を訪れた南蛮と呼ばれる西洋人との出会いをきっかけに、信仰と交易を兼ねての改宗。
構造不況業種の出版業界を救うマザリナードと東洋の旅行記?
ノーデ:ジャックよ、おまえさん、最近は東洋にも詳しいようではないか。
ジャック:おいらは本を売って稼いでいるんでさ。売れ筋はしっかり追っていますよ。
ノーデ:はは〜ん!
ジャック:大航海時代からこっち、読者は外国の事情には興味津々。
ノーデ:たしかに、たしかに。
ジャック:それに印刷・出版業界というのは宿痾の如く不況に見舞われています。貴重な写本や大型本はひと通り印刷で普及してしまいましたからね。それに最近では紙も高くなりました。挿絵も木版から銅版画になって、これがまたコストがかかるのですよ。
ノーデ:ジャックの世界もなかなかたいへんなのだな。
ジャック:印刷業者も生き残りに必死ですよ。新規の読者を開拓しないと。
ノーデ:もう、ラテン語の重い本ばかりでは商売にならないのだな。
ジャック:読者はもっと軽くて読みやすいものを求めているのです。マザリナードみたいに安い紙で手早く済ませられる仕事は印刷業者としても大歓迎だ。
ノーデ:薄利多売路線に変更ということだな。
ジャック:おいらたちも、それで一息つけるんでさ。
ノーデ:だが、東洋について書かれた本が売れるというのはどういうわけなのだ?
ジャック:新世界の珍しい事物は読者の好奇心をそそる。船乗りの日誌だろうと宣教師の手紙だろうと、すぐにフランス語訳が出てますよ。
ノーデ:しかし、宣教師の手紙なんざ、キリスト教の信仰に関することしか書いていないだろ?
ジャック:それがですね、ノーデ先生、そうでもないんですよ。布教に行った先の土地の様子とか習慣とかも書き込んでありますからね。読者はそれをエキゾチックな旅行記として楽しむんです。
ノーデ:それは興味深い。
ジャック:しかも、イエズス会は出版助成金を出してくれる。
ノーデ:それはどういうわけだ?
ジャック:イエズス会は世界へ進出していく。そしてその布教活動を世に知らしめたい。だから、積極的に手紙を各地の言語に翻訳するのです。
ノーデ:なんと、そんなからくりがあったのか…

