出版物のご紹介
マザリナード・プロジェクトでは関連図書を出版しております。
マザリナード探求
L’Exploration des Mazarinades
監修:一丸禎子(学習院大学)
著作:一丸禎子(学習院大学)/パトリック・レボラール(南山大学) / 松村剛(東京大学) / ジャン=ドミニク・メロ (フランス国立図書館)
翻訳:中津海裕子
マザリナード文書とは17世紀フランスのフロンドの乱(1648-1653)の間に印刷出版された文書で、狭義には時の宰相マザランへの誹謗中傷、広義には内乱の世論形成に関わる約6000種類の政治文書である。2011年、東京大学総合図書館所蔵コレクション『マザリナード集成』がデジタル化により、オンライン・デジタル・コーパスとして公開されたことにより、マザリナード研究は異なる専門領域の学際的探求という次の局面に移行した。本書は、原文(フランス語)と翻訳(日本語)で、2016年、東京大学で開催された日仏共同シンポジウム「L’Exploration des Mazarinades(マザリナード探求)」において発表された語彙論、記号論、メディア論、政治哲学、社会学、心性史などの領域からのアプローチと最新の知見を収録している。これらの論考は現代のソーシャルメディア上の言論を考察するうえでも多くの示唆を与えるだろう。
フロンドの乱とマザリナード
La Fronde et les Mazarinades : présentation de l’exposition au Musée Komaba.
著作:一丸禎子(マザリナード・プロジェクト)
マザリナード文書はルイ14世の幼年時代、絶対王政確立前夜に起きた6年におよぶ内乱, フロンドの乱(1648-1653)の際に印刷、手書きで拡散された政治的文書である。その内容は狭義における反マザランだけでなく、王妃アンヌ・ドートリシュへの誹謗中傷、パリ高等法院裁決、国王親書、戦況報告、料理のレシピに形を借りた世相批判、果ては結合双児の出産にいたるまでありとあらゆる発言の集合である。多くは匿名出版だが、『箴言』のラ・ロシュフーコー公爵、『回想録』のレ枢機卿など後世に名を残す書き手も含まれまる。そこには現代のSNS上の政治的論争にも近いものが見出される。 本書は『マザリナード探求』(2021年)の姉妹編として、より広い読者を想定した入門書であり、2016年に東京大学駒場博物館で開催された「マザリナード展」をベースに紙上展覧会(パネル+ギャラリートーク)の形式をとりながら、マザリナード文書とその背景にあるフロンドの乱や当時の出版界の状況、コレクターの出現や研究史を総合的に解説する。