『夜陰に乗じた民事代官の狩り』:印刷業者一斉取り締まり、恐怖の夜
『夜陰に乗じた民事代官の狩り』
ノーデ:印刷業者コティネの工房が家宅捜索されたことで、パリの印刷・出版業界は恐怖におとしいれられ、すぐさまそれがマザリナードに反映された。
ジャック:『夜陰に乗じた民事代官による狩り』が市中に出回るのは4月16日。
ノーデ:これはまさに今回の手入れの様子を伝えている。
ジャック:取り締まりの人手が足りないといいながらも、捕まったら最後ですよ。しょっ引かれてシャトレに連れて行かれたら酷い目にあいますからね。
ノーデ:今風の取り調べを想像してもらっては困るのだ。
ジャック:自白強要がデフォの拷問が待っていますから。
もはやマザリナードは売ることも買うこともできない ?
ノーデ:そこで、『夜陰に乗じた民事代官による狩り』の筆者も「もはやマザリナードは売ることも買うこともできない」と嘆く。だが…
ジャック:そのあとに「密かに隠れて、犬と狼を見間違える時間をのぞいては」と続くのですよ。
ノーデ:「犬と狼を見間違える時間」というのは夕方の薄暗がりのこと。つまりマザリナード文書の売り買いは秘密裏に続くのだ。
ジャック:しかし、この取り締まりを伝える文書が出た直後のポン・ヌフでは、印刷した紙が撒かれたり、歌われたりすることはいっさいなくなりました。
ノーデ:まぁ、見ていてごらん、言論を封じるなんて、そうたやくすできることではない。まだ勝利宣言には早すぎる…
地下出版されるマザリナード文書
ジャック:コティネさんの『イタリア人の和平に対するフランス人のため息』への返答ともうひとつ『復活祭の時期の大法官殿の告白』が密かに印刷されたようです。
ノーデ:本屋も行商人ももはや表立っては売れないから、隠れて商売することになろう。
ジャック:コティネさんに関しては欠席裁判で、今週中にも死刑が宣告されそうです。
*『夜陰に乗じた民事代官による狩り』:原題はLa Nocturne chasse du lieutenant civil
この文書につけられたモローの解説(『マザリナード書誌』【Moreau 2529】)では、「へたくそな書き方だが、興味深い」とあります 邦題は便宜的につけられたものです。
**シャトレについては「1649年3月11日〜17日」の記事をご参照ください。