王位継承権をもつ血のプリンス
宮廷内の権力闘争
ノーデ:フロンドの乱は単に三十年戦争の戦費調達のための増税が引き起こしたわけではない。それはたしかにきっかけになるが、背景はなかなかに複雑…
本の行商人ジャック:王権への影響力をめぐる闘争でもありますからね。
ノーデ:パリ高等法院は王権の制御を試みたわけだが、一方で、宮廷内でも権力闘争が展開するのだ。
ジャック:しかし、王族どうしの権力闘争って、家庭争議みたいな面もありますよね。
ノーデ:王家というのはその繰り返しよ。宿命みたいなものだから。
ジャック:コンデ家も遡ると、ブルボン家から枝分かれしております。
ノーデ:アンリ4世のお父さんの弟、すなわちアントワーヌ・ブルボンの弟、ルイ1世・ド・ブルボン=コンデね。これがコンデ親王のひいお爺さん。
ジャック:ああ、ややっこしい…
王位継承権
ノーデ:コンデ親王はルイ14世のcousin(従兄弟)と表現されることがあるけれど、これはフランス語のcousinが使われる範囲が広いからで、かならずしも直接的に親の兄弟の子というわけではない。
ジャック:しかし、アンリ4世>ルイ13世>ルイ14世と来て、ルイ14世に子供がなくて世を去ったら、その弟のフィリップ殿下、さらにルイ13世の弟のガストン・ドルレアンについで王位継承権をもつのですね。
ノーデ:それだからこそ「血のプリンス」と呼ばれるのよ。
ジャック:ルイ14世が生まれる前、ひ弱なルイ13世(1601年生まれ)や陰謀ばかりたくらんでいる弟のガストン(1608年生まれ)がいなくなれば、コンデ親王(1621年生まれ)は王冠に手が届くところにいた。
ノーデ:それでお父さんは万全の構えで帝王学の英才教育を施します。
ジャック:当時宮廷で大流行りだったオノレ・デュルフェによる恋と牧歌趣味満載の小説『アストレ』なんかは読んじゃダメと禁止されていた。
ノーデ:しかし、運命の輪はそう都合よく回らないし、準備していたからといって、チャンスの神様は微笑まない。