痛風とフロンドの風とどっちが痛い? マザラン枢機卿
マザラン枢機卿のご体調
ノーデ:こんなときに、マザラン枢機卿の痛風が悪化…
本の行商人ジャック:今週はだいぶよくなられて、御前会議にも出席されているようです。
ノーデ:この時代にはけっこうこの痛風に苦しんだひとが多い。
ジャック:先の宰相、リシュリュー枢機卿も晩年は苦しめられましたね。
ノーデ:ムッシュー、すなわちルイ14世の叔父にあたるオルレアン公もわずらっている。
ジャック:オルレアン公は都合の悪い時に痛風をいいわけにして出てこないこともあるみたいですよ。
ノーデ:遺伝の要素もあるようだが、美味しいものの食べすぎかもしれぬ。
ジャック:痛風の発作が起きているときは、歩くのもままならないようですね。
仲がいいのか悪いのか…宮廷の人びと
ノーデ:痛風が良くなったり悪くなったりするのとおなじように、宮廷のなかのひとの関係もくっついたりはなれたり、微妙な距離感で動いている。
ジャック:コンデ親王は王妃様と枢機卿抜きで会ったりしていますよね。
ノーデ:ぶっちゃけ…なんで、あんた、そういう態度なの?なんでフロンド派と仲良くしてんの!みたいな会話があったのだろうか…
ジャック:まぁ、そんなところみたいですよ。枢機卿がオレの敵と手を組んでいるのだから、オレがフロンド派と組んで何が悪い、ふん!みたいなことをおっしゃったとか…
ノーデ:互いに裏では悪口を言い合うのがデフォの世界、宮廷とサロン…
ジャック:まじめに思想的対立するとか、そういうことではなくて、あの人嫌いだから、こっちにつくとか、過去の因縁が…とか、そういうの多くないですか?
ノーデ:このあと17世紀末に起きる新旧論争だってそうなんだが、まぁ、論争の陣営というのは一筋縄ではいかないものだ。
17世紀前半のメンタリティ
ジャック:論争も人間の営みである以上、すっきりと思想信条では割り切れないのが世のつねなのでしょうかね。
ノーデ:そう考えると、ラ・ロシュフーコーさんが、危険を感じながらも、シュヴルーズ夫人に請われればすっ飛んで行ったり、身を挺してロングヴィル夫人をお助けしたりするのも理解できる。
ジャック:あの方の場合は恋心、信条じゃなくて心情に動かされているのでは?
ノーデ:そんな言い方をしては気の毒だよ。ラ・ロシュフーコーさんにしてみれば、そうするのが騎士道だったのかもしれん。
ジャック:騎士道といえば、ドン・キホーテがスペインで書かれ(1605年、1615年)、フランス語に翻訳されて読まれた時代ですからね。
ノーデ:フランス演劇でいえば、ラシーヌやモリエールの前、コルネイユの時代なのだ。
ジャック:コルネイユ、読み直してみましょうかね。
ノーデ:コンデ親王がらみでは、『ニコメード』なんかがいいんじゃないか…
ジャック:秋の読書週間を控えてますからね!